新入生歓迎会は、ざわざわと生徒の私語で賑わうなか開会を告げられた。

宣言を告げた生徒が壇上におり、生徒会長からの挨拶として早見が入れ替わるように壇上に上がる。

元就はその背中を見つめた。
彼の眼には怒りがない。むしろ冷ややかな余裕があった。

元就の手には、生徒会が準備した"宝"を見つけるためのヒントのひとつが握られている。

この宝探しは、宝ものを見つけるために、生徒会や実行委員会が準備したミニゲームに成功しなくてはならない。
ミニゲームに成功して、宝ものを見付けるためのヒントをもらえる。

そのヒントはニ、三個手に入れれば勘のいいものならすぐに気付くだろう。だが、気付いただけでは宝ものは手に入らない。
ミニゲームを全て成功させ、ヒントを全てそろえ、かつ宝ものを"持った"状態でステージで待機する役員に宝ものを手に入れたことを宣言しなければ、宝ものは参加者のものにならないのだ。

元就がヒントをひとつ持っている限り、宝ものは絶対に誰も手に入らない。
何故なら宝ものを手にいれるためのヒントを"誰にも渡すことができない"からだ。

くだらないイベントで一個人の一生を左右されることはない。それが元就の余裕の理由である。

この学校の生徒は人間であろうとなんであろうと、自分以外のものは、"ひとではない"と思うとものが多い。
自分の欲求のためなら道理をねじまげてでも欲しいものを手にいれようとするだろう。たとえ、幸村が拒んでも。
それはファンクラブが起こした一件で明らかだ。

幸村が誰かの"物"になることは避けられた。しかし、まだまだ懸案事項がある。

それは幸村が宝もの……最早ゲームの"景品"か。景品だと質の悪い学生に気付かれたとき、それにより起こる騒動である。

それが火だねとなり火が大きく燃え移るように騒ぎが大きくなったら。
その興奮によりルールなど忘れ、無理にでも幸村を我がものにしようとしたら……

問題は山ほどある。

しかし、そればっかりは元就はどうにもできない。
そのときは自分の身は自分で守ってもらうしかないな、と元就は他人事として捉えた。

****

さぼるかと思っていたが、ちゃんと顔を出していることに驚いた。
佐助はそれをネタにわざわざ政宗をつつく。
周りの者は幸村と小太郎を含め皆はらはらしていたが、意外にも政宗は大人しかった。

政宗は面倒くさそうにしているが、佐助はそれを楽しんでいる節がある。時折なれなれしく耳打ちしては、政宗に振り払われていた。

中学からの持ち上がり組で政宗を知る一年のみならず二年までもがそれにぎょっとする。

(よく生きてるなあ)

それが素直な感想だ。

幸村は佐助が妙に政宗に構うので、自然放っておかれる形になる。

むくれて苛々した目でふたりを睨んでいた。

小太郎も同様である。いつもはうるさいくらいに構ってくる兄が政宗に一人占めされてご機嫌斜めだ。
慶次はそんな小太郎を慰めるためか、あれこれと話しかけた。
小太郎はそれに頷くか首を横に振るかで返す。

「な、な、幸村」

慶次は急にむくれている幸村にこっちへこいと手招きする。
後ろを歩く幸村は無視したがしつこく呼ばれるので慶次の隣に並ぶ。

「なんだ?」

「あれ、邪魔しなくていいのか?」

あれ、と指すのは前方にいるふたり。

佐助はそれに聞こえてるんだけど、とじと目で返す。

「邪魔ってなにをだよ慶次」

「いやーふたりの世界を作ってるのが気になってさあ」

小太郎と幸村がふてくされちまってるぜ。にこやかに告げる。

佐助はそれにきょとんとして、次の瞬間小太郎に抱きついた。小太郎はたたらを踏んだがすぐに持ち直し、今までのむすっとした顔が瞬時になつっこいものに変わる。

「そっかあ〜こた。俺に構ってもらえなくてさみしかったんだ!?」

小太郎はこくんと頷き、佐助を抱き締め返す。
佐助、幸村のことは見事に無視である。

「そ、某もさみし……」

幸村は手をあげて小さく訴えるが、「幸村眼中にないなあ」と慶次が笑うように視界にも入っていないようであった。

「ふられたな」

今まで黙秘を続けていた政宗まで口を開き、幸村をからかった。
慶次はそれに珍しく驚いた表情を見せ、幸村は政宗がしゃべった〜!と珍物と遭遇した顔はせず、政宗の言葉そのものに激高する。

幸村は睨みつけると政宗はそれを楽しむ視線を返し、背後に竜と虎の錯覚が見え、ざっぱーんと波打った。

何時もならそれを生暖かく見守るのが慶次の役割であるが、政宗の変貌の理由が気になり二人の観察を切り上げ弟とじゃれあう佐助にこそこそと耳打ちする。

「一体政宗に何したんだ?」

佐助は何ってほどのことでもないけどと前起きして、

「友達になろうぜ、って言っただけ」

眩しいくらいのにこやかな笑みを見せた。

慶次はその無駄に輝かんばかりな笑みを見て思った。

(うそくせ――――――――)


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