みなにナカノンと慕われている三年の男子がいた。
彼は自他共に認める幸村の大ファンであり、肖像権をまるで無視したファングッズのコレクターであった。
幸姫ブロマイドをはじめ、幸姫Tシャツ。幸姫うちわ。
ありとあらゆるものを金を注ぎこんでゲットし、限定ものの幸姫抱き枕を秘密裏に行われた学内オーディションで競りおとしたときには、死んでもいいと思ったほどだ。
ちなみに抱き枕は使うのがもったいないので、特注のケースを買いそれに厳重に封印し、毎日ご神体のように拝むのが日課になっている。
まるで何処ぞの宗教である。
彼には野望があった。
ここまで幸村を慕っているのだから、やはり一番望むのは幸村本人と仲良くなることだ。
そして出来うるならば口に出すのも憚れるようなことをする仲になりたいと思っているのだ。
今までファンクラブの牽制のせいでなかなか幸村に近付けなかったが、今ファンクラブは風紀委員に解体され、以前のような力を失っている。
これは好機だ。
今この時こそ、新入生歓迎会という名目がある今日こそ、先輩として話しかけ、仲良くなるきっかけを作りたい。
チームメイトとともにおざなりにミニゲームを済ませながら彼は幸村といかにすれば仲良くなれるかを考えていた。
ふと、チームメイトに見せられたヒントのひとつに、彼は目を引かれた。
『一年』
そういえば姫も一年生なんだよな。と胸をときめかせた。これだけで姫を連想しちまうなんて俺って重症だよな、とまだ笑う余裕があった。
次のゲームでチームが手に入れたヒントは、『尻尾』。
そういえば姫も犬の尻尾みたいに髪を縛ってたっけな、と幸村のかわいらしい姿を思い出し、頬緩めた。
姫がこのゲームで貰えるものだったらいいんだけどな。
そう益体のない願望を抱き、もしそうだったらどうしよう。そして姫を手に入れられたらと妄想を繰り広げているうちにチームメイトがみっつめのヒントを手に入れていた。
彼は、願望が現実であったことを知った。
ヒントの内容は最早隠す気がないだろうと言いたくなる。
印刷された紙にはこう記されていた。
『プリンセス』
彼だけではなく、順調にゲームを進めているものも、このゲームの景品がなにであるか、気付きはじめていた。
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一方、幸村たちチームは順調にゲームを進めるものたちと比べなくても全く進んでいなかった。
ヒントをひとつとして手にいれていないのである。
やる気がないのではなく、幸村に話しかけてくる者により足止めをくらったり、ミニゲームの名目で幸村にいかがわしいことをしようとする輩がいるのでまともにゲームに参加出来ないのだ。
廊下を歩きながら、佐助は小太郎を放ってまで怒る幸村をなだめ、慰めている。
「なんなんだっあいつらは!」
幸村は健全なる少年である。野郎ににやにやといやらしい目で見られ、尚且触られそうになるなど我慢出来るわけがない。
自分が佐助をそのような目で見ていることはさておき。
チーム五人はこのゲームの不快さに心底嫌気がさしていた。
たかがゲームに何故こんなに嫌な思いをあじあわなければならないのか。
「ボイコットして寮でゲームしてるか?」
「それいいかも」
佐助は慶次に賛同する。
こんなものに参加してやる筋合いはない。
主催者側がまともに対応せず己の我欲を押し付けてくるものに、まじめに取り合ってやる必要はない。
そう結論付けたとき、教室から出てきた学年が上の生徒たちとはちあった。
彼らはこそこそと目配せして、ぎらぎらした目で幸村を見つめてくる。
それに五人は言葉にならない嫌な予感を感じた。
反射的に幸村は佐助を守るように前に立つ。
自分が原因で巻き起こる騒動に佐助を巻き込んで怪我など絶対にさせたくないからだ。
そうでなくても、佐助に怪我をさせるなんて己の目が黒いうちには絶対にさせない。
小太郎も佐助を守るように前に立つ。その両脇を政宗と慶次が固めた。
(え、え〜と?)
佐助は戸惑った。こういう場合、幸村を守るように立つのが普通ではないだろうか。
これではまるで……
自分が守られるべき姫のようではないか……
「なんの用だ?」
唸るように幸村が問う。
彼等は幸村の険悪な様子に戸惑うも、にやにやとした笑みを崩さない。
「いや。姫、さ。俺たちと一緒に来てくんない?俺たちはセンパイなんだから、もちろん言うこと聞いてくれるよね?」