「お前ら何処に行ってたんだよー。あ、風魔。ようやく復活?久しぶりだな」
この学園、エスカレーター式なので、今年度初めて学校に来る小太郎の顔をクラスの半分以上が知っていた。
誰だ、首を傾げるのは高校から編入してきた者たちだ。
いきなり来て、当然のように空いた席に座る小太郎に困惑している。
「弟?」
と首を傾げ深く子細を尋ねようとしたとき、クラス委員がパンパンと手を叩き、騒がしくなったクラス内を引き締める。
「前田に猿飛に風魔。お前たちのためにもっかい説明してやるよ。三日後にある新入生歓迎会だが、宝探しをやることになったんだ。
生徒会が隠す"宝物"を見付だすっていう簡単なルール。見付た宝物は自分のものに出来るっていう素敵なオマケつき」
その宝物が"何か"は見付けてからのおたのしみである。
「それで、これから残りのホームルームの時間を使って、五人ずつのチームを作ってもらう。人数の都合上、四人チームがひとつできるから。
時間内に全員が入るチームが出来なかったら、出席番号順で決めるからな」
幸村が
「佐助っもちろんおれたちは一緒の……」
最後まで言い切る前に佐助は小太郎の元へと駆けていった。
「小太郎っ!一緒に宝探ししようなっ」
佐助の表情は幸村に見せたことがないほど輝いていた。
動物好きが小動物を見つめるときのように、とろけきったそれに幸村はいらっとする。
(俺にはあんな顔見せたときないぞ!)
こくん、と頷く小太郎を、幸村は無言で睨みつけた。
小太郎はそれに、唇に一瞬歪んだ笑みを刻む。
「な」
幸村が小さく唇をわななかせていると、椅子に座る小太郎を、佐助は背中から抱きしめた。ぐりぐり頬を小太郎に擦りつけご満悦だ。
「ななななななななな!」
そ、そんなうらやましい行為を俺はされたことがないぞ!
小太郎はそんな佐助の腕を引っ張り、更に密着する。
「仲がいいなあ」
そんな二人を見て慶次は楽しそうに笑っている。
何時の間にやら幸村の隣に来て、頭を撫でてくる。
「そう怒るなって、佐助は小太郎が可愛くて仕方がないんだからさ」
子狐の兄弟がじゃれあってるようなもんだろ?
何時の間にやら佐助を呼び捨てにし、佐助を好きな自分よりも佐助をわかっているような口をきく慶次に、幸村は刃の如き鋭い眼光をつきつけた。
慶次はそれにびくともせず、ひょいと肩をすくめる。
「だから怒るなって」
頭を撫でてくる手を振り払う。
「子供扱いするな!」
牙を見せて犬のように唸る。
ふん。とそっぽを向き、佐助とじゃれる小太郎を再び睨みつける。
佐助に笑みを向けていた目を幸村に寄越し、長い前髪の隙間から覗く瞳に、幸村と同様の剣呑なものを含ませる。
「お、おーい。二人とも?」
険悪な空気に佐助は戸惑う。
慶次は小太郎と幸村の間で、バチバチと火花が飛ぶのを見た。
今、二人の間で、ひとりの姫君をめぐる戦いの火蓋が、切って落とされたのだ。