「やあ、みなさん。姫は無事?」
「さ、猿飛!なんでここに!?」
「そりゃあ王子さまがお姫さまを助けにこなきゃ、お話にならないっしょ?」
恥ずかしげもなく興じるように言うと、幸村の姿をすばやく確認しほっとする。まだ無体なことはされていないらしい。
しかしながら先ほどの佐助の台詞。幸村が聞いていたら渋面を作り嘆いていたことであろう。
なにせ幸村は佐助をお姫さま認識し、自分がその王子さまでありたいと思っているのだから。
「なーにが王子さまだ!
俺たちの姫をたぶらかしやがって!」
教室にいる者たちが殺気立つ。
佐助はそれにひょいと肩をすくめ、たぶらかした覚えはないけどね、と挑戦的に笑ってみせる。
「ほら。俺さまってあんたらと違って大人の魅力にあふっおっと」
佐助の能書きが終わる前に、少年の一人が佐助に突っ込んでいった。
凶器を持った少年たちが敵わなかった相手に、素手の彼らが敵うわけなく。
『あ』という間に。
ドカバキゴキ!
のしてしまった。
そして倒した少年たちの中に君臨し、呟く一言がじじくさい。
「俺も年かなあ。これしか動いてないのに、かなり疲れた」
少し息があがり、早い呼吸をしている。
ふ、と息を吐き、乱れた髪を掻きあげた。
やけにいらぬ色気を散らしているのは"大人"の魅力というやつなのだろうか。
佐助は幸村の側によって、その穏やかな寝顔を見つめてほっとする。
「心配かけないでくれよなあ」
す、とそのやわらかい頬に指をのばしたその刹那――
安堵で気を赦した佐助の隙を見計らい、大柄な少年が佐助を羽交い締めにする。
「なっ……くそっ離せっ!」
佐助は驚異的な瞬発力があるかわりのように、腕力が実は相当に低い。
幸村をセオリー通りに抱き上げて、安全な所に運んでやる、ということが出来ないくらいに、"大の大人"のくせに力がなかった。
そんな佐助が、力任せに体の動きを封じられた状態から逃れられるはずもなく、念の為と押しつけられたクロロホルムから逃げることはできなかった。
佐助の意識は、落ちた。