持っているのはバットやナイフ。スタンガンまである。BB弾を持つ少年が引き金を引き、佐助は素早くそれを避けた。
カンカンっ。
フェンスの金属にあたり、のめりこむ。
「飛び道具まで使ってくるとは卑怯なんじゃない?」
佐助はポケットに手を突っ込み、余裕ぶって笑ってみせた。
多勢に無勢なこの状況。
佐助の余裕は一体何処からやってくるのか、笑みまで刻んでいる。
「な、なんで弾を避けられるんだよ!」
人外のものでも見る目で、佐助を見つめる紙袋集団。
「撃たれた後には流石に避けられないけどさ、撃つ前なら避けられるわけよ、これが。
撃つ方向はわかってるんだから、そこから引き金を引く寸前にちょいと場所を移動するだけ」
それが佐助を素早く弾を避けたかのように見せるのだ。
簡単に言ってのけるが、普通はそんなことを簡単には出来ない。
佐助の身体能力の高さを物語る台詞である。
「俺を撃ちたきゃ、俺の動きを予想しな。
これだけ仲間がいたら、やたらめったら適当には撃てねえだろ?」
くすくすと佐助は笑う。
「はい、まずそこのナイフのあんた」
びっと名指しする。
「ナイフは凶器。一見有利に見えるけど……」
次の瞬間、ナイフを構えた少年が吹っ飛んだ。
「リーチが短いんだよね。
ほら、俺さま足が長いし」
リーチ云々の語りが不要に思えるほどの速さ。
何せ佐助がどうやって少年を倒したのか分かる者がいない。
動きが見えていないのだ。
「蒼天疾駆猿飛佐助ってね。
こんなおぼっちゃん高校じゃあ知ってる奴もいないだろうけど、俺ってそれなりに悪でさあ……それに」
ガキには負けてられないし、と呟くこの男。
れっきとした十八歳で、今年十九になる大人である。車の免許も持っている。
それがなんでまた高校一年生なんだというのは、またおいおい語るとして、佐助は年上の余裕を見せつけた。
バットをふりかざす少年にスキがありすぎ、と腹に拳を叩き込み、スタンガンを持つ少年を蹴りあげる。
かなりの人数をあっという間に石畳に伏させ、ひゅうと口笛を吹く。
「我ながら壮観!
ま、相手が悪かったってことで」
佐助はひょいとしゃがみ、うめく少年に訊く。
「姫は何処?悪さしてたら容赦しないよ?」
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幸村は眠っていた。
古典的ではあるが、ネットで購入したクロロホルムの液体を染み込ませた布を押し付け、強制的に眠らせた。
くたりとなった幸村を、ファンクラブが占領している教室に運び込んだ。
ソファに寝ている、脳殺的な幸村の寝顔に少年たちは見入る。
「かわいい……」
「女の子みたいだ……」
「いや、それ以上だろ……」
一人が、口にする。
「……キス、しちまってもいいかなあ」
いや、駄目だろ!
だっておれたちの姫だぞ!汚しちゃだめだ!
反対意見があがるものの、
「ん……」
あどけない幸村の寝顔に、皆が唾を飲む。
「皆が平等に、姫にキスすりゃあいいんじゃねえ?」
そ、そうだよな!
うんそうだ!
幸村の意思を無視した案が当然のようにまかりとおり、では誰が最初にキスをするかを決めるためにじゃんけんを開始したとき――
ばん!
音をたてて教室の戸が蹴破られた。