幸村が佐助に惚れたのは入学式のとき。

出会った瞬間にである。

いわゆる一目惚れ。

佐助とふいに目があった瞬間、幸村の体には電流が走った。

(……な、な、な)

真田幸村と猿飛佐助。同じくさ行で出席番号は隣接し、当然のように入学式の席順も隣であった。

席に座り、佐助を目にした瞬間に、突然すぎる恋の訪れに、最初は動揺したものの、幸村は佐助の"かわいさ"にその一目惚れを受け入れた。

幸村の目には、姫と騒がれる己よりも、よっぽど守ってやらなければならない"お姫さま"に思えたのだ。

自分よりも背が高かろうが、男前だろうが、……男であろうが、幸村には全く関係ないことであった。


さて、幸村と佐助のなれそめ(?)はここで区切り、場面を転換しよう。

所変わってカーテンを締め切った暗い教室。

むさ苦しい男、ではなく……少年たちが雁首をそろえ、深刻な表情と怒りに染まった顔が口々に佐助を罵る。

「姫をあのままあいつに独占させていいのか?」

「くっそう……俺たちの姫をたぶらかしやがって!」

いつから幸村は彼らのものになったのか……

その傲慢さに気付かず、少年たちは"悪の権化佐助"からいかに"かよわい姫君幸村"を救うかを語っている。とんだ騎士気取りの集団だ。

まさか、その姫君にとっては、佐助がお姫さまで、幸村がそのお姫さまを相手に妄想し、自慰のおかずにしているなんて知るよしもない。

まあ、おかずといっても、男女のあーだこーだを知らない幸村が、男同士のあーだこーだを知らないのだから、ちらりと見える佐助の肌に興奮し、週に一、二回、吐き出す程度である。

幸村を偶像化している彼らには、想像もつかないことだろう。彼らの頭の中で、幸村は一体どんなことになっているのか。

きっとトイレにだって行かないと思っているのではないだろうか?

とにかく、幸姫さまのためなら、例え嫌いなやつがメンバーにいても一致団結出来るファンクラブの面々は、ぎゅうと強く拳を握りぶつけあい、打倒佐助を誓った。

******

その頃佐助は屋上で弁当を広げていた。

彼は寮の部屋におまけのように付いている台所で、弁当を作り食べる。

同室の幸村はまだそれにはありつけたことはない。羨望とものほしげな眼差しをするものの、佐助はにっこりと笑い回避している。

(下手に期待させても可哀想だもんなー)

幸村の好意……恋心を余すことなく感じ取ってしまう佐助の心中は苦い。

(女の子ならあの可愛さだし、即オーケーむしろ望むところなんだけど……男じゃあなあ)

男のカマを掘る趣味はない。

もったいない。あれで女の子だったら本当にタイプなのに。

佐助はノーマルだ。この異様なほど同性愛者の多い学校においてごくごく少数の女好きだ。

幸村と親しくしているのは、恋人にはなれないが、友達にはなりたいと思っているからだ。

「おっそいなあ……姫」

幸村は食堂で佐助には手が出せない高い弁当を買いに行ってるのだが、それにしても遅い。

「なんか、あったかな……」

異様に執心するファンクラブのこともある。

佐助は幸村を迎えに行こうと立ち上がった。

その一秒ももない間に。

乱暴に屋上のドアが開かれた。
その音に反応し佐助は素早くドアの方向を向く。

そこから、顔を隠すためにであろう。紙袋に目、口のための穴をあけたものを被った、奇妙な集団がぞろぞろと出てきた。

「なんだよ。これから仮姿パーティーでもやる気か?」

佐助が喩揶ると、紙袋の集団は煩い黙れと怒鳴りつけ、一勢に佐助に襲いかかった。



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