「だ、なあっだんなあっ」

佐助は顎をのけぞらせる。

振動は耐え間なく佐助を快楽に導く。幸村の狙った通り血は潤滑油の役割を果たす。
佐助の竿から伝い落ちる白濁が結合部を濡らし、また馴染ませる。
佐助の腹から下はぐっしょりと濡れていた。

ぴちょん、と廊下に青臭いひと雫が落ちる。

佐助の白濁が二人の歩いた痕を作っていた。

校舎の一階の半ばまで回れば佐助の体をさいなむものにそれから逃れるためか苦痛を快楽と自己暗示させた。幸村の与えてくるもの、幸村の存在、全てに狂う快楽を見出し佐助は獣のように乱れ鳴く。
痛みに感じるようになってしまった佐助の体は、耐えず津波のように襲いかかるものにびくびくと体を痙攣させ続けた。

"体"に苦痛を与えるものが、ずっと佐助の中に存在していて、"感覚"はそれを快楽に摩り替える。

常人の得るであろう快楽に、佐助が見出してしまう快楽が付加され、佐助の体は度を越えたものに血をざわめかせ、うねり、昂奮をつきぬけ、脊髄にびりびりと電流を走らせる。

小さな体は熱の解放を求め、佐助を叫ばせ、雄から白濁を溢した。
それだけでは溜ったものは吐き出しきれず、蓄積され鬱屈したどろどろしたものが佐助の中で暴れ狂うのだ。

与えられるだけ与えられて逃げ場はない。

ううと獣の唸りを発し、佐助は幸村の肌に噛みつく。
何かに全身ですがらなければ壊れてしまう。

己ががらがらと崩壊する錯覚に襲われ、佐助は全霊をとし幸村に無言の助けを求めた。

追い詰めて破壊してくるのは、幸村であることを知っていて。

「だんなあ……」

幼子のように幸村を呼ぶ。

反抗する気力も体力も失った佐助を幸村は壁に押し付ける。壁で背中を支えてやり、頭をひと撫でした。

「いい子だから、いうことを聞こうな?」

表向きは反抗を示さなくても、その内心は違う。

やめてくれ。たすけてくれ。と佐助は目で訴え続けており、幸村は佐助の心が幸村の行動にげいごうしない限りやめてやるつもりなどないのだ。

幸村の凶行が終わるのは、佐助が幸村の体と心を満足させたときだけなのだ。

体だけ幸村の気がはれても、佐助が逆らい続ければ、幸村の気に食わない。他の手段をもって、佐助の体をいじめぬくだろう。

心が満たされても、幸村は止まらぬ。
彼は露骨な言い方をすれば性欲の塊であり、佐助に狂っている。
"満足"に至るまで気が遠くなるような階段を登らなければならないように、幸村が心だけで全てが満たされるわけではないのだ。

佐助がようやく解放されるのは、佐助から幸村を求めて、幸村の心を満たし、そして彼が佐助に吐き尽した瞬間である。

そしてそれは始まりの終わりにすぎず、永遠に続くであろう二人の営みのほんの些細な一時にすぎぬのだ。


それは遥か昔からの決まりであり、魂に刻まれたこと。
陳腐な言い方をすれば宿命であり、運命であった。
前世の因縁は何処までもつきまとい、二人を縛りつける。
幸村はそれを望み、凶行を嫌う佐助すらそれを求めているのだからきっと二人の関係は変わらないのだろう。

淫らで汚れたただれた関係。赤い糸なんてかわいいものではなく、鈍く光る黒い鎖がぎゅうぎゅうと締め付けているのだ。

離れるな、と。

鎖よりも鋭い蕀が二人を繋いでいるか。毒々しく赤い薔薇が二人の赤と白を彩るのであろう。

もしくは蕀のからみつく黒い鎖。

なんにせよ言えることはただひとつ。

二人は互いから逃げられず、逃げる気もないのだ。

精神の限界に達した佐助が絡まりをほどき逃げようとしても、幸村がはなさない。

逃れられても、すぐに追い付く。

佐助は耐えず幸村のために艶の花を咲かし、蜜を搾取されなければならないのだ。

何人も踏み入れられぬ二人の世界。

触れたら蕀に指を傷つけ、鎖と蕀に囲まれる美しき花を求めようなら、その花を餌として生きる花守の獣に牙を剥かれ致命的な傷を負うはずだ。

「全部……佐助なんだ……佐助の肉が、佐助の血が、佐助の精液が……俺の魔羅を包んでいる」

二人以外存在しない廊下に幸村の声が響く。淫猥な言葉が佐助の脳に浸透し溶かす。

歯が、ぎりぎりと幸村のスーツを噛む。いっそのこと彼のもろ肌に噛みつき、ぱっくりと割れた皮膚から溢れる血をすすりたいと思った。
渇いた喉をうるおし、血の味で酔っている頭に喝を入れたい。
幸村の両手が、佐助の太股をがっちりと掴んだ。

また、佐助の中で動く気なのだ。

ゆるゆると律動をはじめ、佐助はそれに合わせるように呼吸をする。どうすることが一番楽かを体が判断し、動いた。

体は依然、力を抜かない。
佐助の腕は幸村にがむしゃらにすがるし、足は突っ張る。
しかし、先ほどよりはずいぶんと楽に男を受け入れていた。

「あっだんなっひぃっあんっあっはあっ……!」

幸村に腰をを叩きつけられると、反動で腰が壁にぶつかる。ひりひりとしたものが痛みではなく、新たな快感として伝わり、皮膚の奥が喜びの声をあげた。

痛みが……
痛くない……

全部気持ちよくて……
死んでしまいそう……

「佐助に口淫させながら、ずっと尻を犯してやることを考えていた」

声が、耳を犯す。
わんわんと廊下にいやらしい台詞が響き、幸村の狂気を繰り返した。

「小さい口で、俺のを懸命にくわえこんで、顔を赤くして……かわいかったぞ……佐助。
飲みほそうとして咳こんで、俺のを吐き出していたな。俺が怒ると脅えて……その時の表情は誘っているとしか思えなかったぞ」<

佐助はぎちぎちと幸村を締め付けてくるのに、無理矢理抜き、挿すものだから、皮膚が擦れてまた佐助の中を裂いた。

少年の高い声が幸村の狂気に被さる。

「な、ここの口なら、ちゃんと俺のを飲みこめるだろ?
上の口と違って素直だもんな。ここで俺のを飲むの、佐助は昔から好きだものなあ?」

幸村の問いに、佐助は首を振ってしまう。

否定しているのではなく、たまった鬱憤のもどかしさに髪を振り乱しているだけである。

幸村はそれをわかっていて、盛大に眉をしかめた。

(まだわかっておらぬか)

幸村の傲慢な精神は、何時いかなる場合も、佐助は自分の思う通りにしなければならないのだ。

狂うような快楽で我を忘れていようと、幸村の不快になるようなことをしてはいけない。

「んっ旦那ぁっああっ」

「問は否で答えるか。
佐助は余程いじめられるのが好きらしい」

お前はマゾヒストか?
とびきり酷くしてやろうか?

幸村の言葉に、ぞくりと肌が粟だった。
これでは終わらぬ。始まりすら終わりを迎えようとしない。

「……ちがっ!すきっすきっ旦那のがすきっだよ!」

「そうか。いじめられるのが泣くほど好きか。
それならば、佐助が満足できるような酷いことを、たくさん考えてやらないとなあ……」

佐助は幸村の言葉に泣く。嫌だと叫んだらまた残酷なことを強いられる。かと言って頷いてみせても、喜々として佐助の体に思いつく限りの淫らな悪戯を施すだろう。

佐助は泣くことしか許されない。
泣くことが佐助の意思表示だ。

「お前の体に刻みこんでやろう」

佐助は肩を震わせ、祈るように天を仰ぐ。それはこもる熱を出すための叫びであったが、煌めくと汗を飛ばし、目を閉じ、堪える様は、神を信じ、一心に願う神聖な修道女のようであった。

「昔あれだけ体に教えこませてやったのに、忘れてしまったようだからな」

俺に逆らったらどうなるか、を。

「もう二度と忘れぬようにな……」

暗く囁く言葉に、佐助ははらはらと涙を溢した。

「昔は、いきなり、こんな乱暴なことしなかったのに……」

徐々に徐々に、病がおだやかに体中にまん延するように。

長い時を使い体に"教えた"ことを、一気に叩きつけようとしている。

「……覚えているはずのことを忘れているもの覚えの悪い生徒には、これくらいしてやらないと駄目だろう?」

「……ひっ」

幸村は根元まで佐助の蕾に無理矢理押し入れた。

そして、亀頭だけが入り口に入るところまで抜く。

それを何度も繰り返す。

「いやっ、あんっ……はあっひゃあっひっあああっぃっはぁっ!」

佐助の耳と幸村の耳に、廊下に鳴り響く佐助の艶声がさす。

佐助は羞恥で身を固くし、幸村はそれを溶かそうとまた強く打った。





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