佐助の視界が反転した。
佐助は反射的に体をこわばらせた。熱った体に冷たい床が気持ちいいと、逃避のように思考を飛ばす。
ジッパーをおろす音がして、トランクスをずり下ろされる。
固いものをほとんど溶かしていない場所に押し付けられて、佐助は息を飲んだ。
「……力を抜け……逆に痛いだけだ」
「……わかってる、けど……」
こわいのだ、と訴えるが、幸村は耐えてくれ、とそればかり。
「ずっと、佐助としたかったんだ……」
めり、と威圧する音に佐助は顔を歪ませた。
「……やだっやめて、くれ!」
佐助は頭を振った。
幸村は何も言わず進める。いやだいやだと今更のように強く拒むが、幸村は佐助に苦痛を与えなそれでも止まらない。
ぶ、つ。と――
中が切れる音に佐助は気が遠くなった。
「切れたな」
血が出て進み易くなるかもしれぬな、と人事のように呟き、そこで乱暴に腰をゆすった。
「……!!!!!」
佐助の絶叫は幸村の掌によって塞がれる。
「うっ……あぁ……」
痛みにぼろぼろと涙を流した。幸村はそれに罪悪感も抱かぬのか、血を佐助の中で全体に馴染ませるようにゆっくりと抜き挿しし、また奥を目指し出した。
それは佐助のよいところをつくためにではなく、己のものを根元まで飲みこませ快楽を得たいがための行為に思えた。
佐助の涙は止まらない。
「……だんなぁ……おれ、しんじゃう……」
「死にはせぬ。あまり俺に逆らうな」
あまりにも酷く佐助が拒むので、腹に据えかねているらしい。
幸村は佐助の涙を舌で舐めとりながら、腰を進める。深く繋がることを望み、未熟な器に無理矢理おさめていく。
ひくひくと細い体が痙攣する。
「ゆるして……も、ゆるして……」
「俺が満足したら許してやるさ」
そんな、と佐助は声をあげる。
それでは朝までかかるのではないか?
「家……帰らないと、しんぱいするぅっ」
佐助は必死に訴えるが、
「連絡を入れろ。
友達の家にでも泊まると言え」
無情に切り返す。佐助はひいひいと泣きじゃくる。
「今日は宿直当番でな。
明日は学校が休みだし、丁度いいだろう?」
幸村は最初から佐助を家に帰す気などなかったのだ。
ぐっぐっと深く深くえぐられる。
あっというまに佐助の奥をつき、佐助はたまらずむせび鳴く。
快楽と苦痛が中でいりまじり、どろどろと溶けて、またあの"花"を咲かせと促すのだ。
喉が痛くなるほど佐助は矯声をあげた。
一時は痛みで萎えた逸物が立ち上がり、吐き出したくて佐助は弱く首をふる。
そのもどかしさを幸村に伝えるために頭をぐりぐりと押しつけるのだが、幸村は取り合わない。
「だんなあ……おねがい……」
佐助は懇願するが、幸村の手は佐助の雄ではなく、背中と腰にのびる。
何をする気だ、と。佐助は覚悟もないままにいきなり体勢をかえられた。
「うっああっ!」
中の角度が変わり、そのはずみで丁度佐助のよいところを強く擦り、佐助は幸村の腹に射精した。
幸村のスーツは白濁にベッタリと汚れる。
「ああ、なんてことをしてくれるんだ。佐助?
弁償しろよ?」
高価そうなスーツを中学生の佐助が弁償できるはずもない。演技がかったわざとらしい口調で続ける。
「体で返すんだ」
「あ、あ……あ……ごめんなさい……」
佐助の謝罪ににんまりと笑い、幸村は立ち上がる。
無理のある角度のせいか、繋がりは浅くなったが、佐助の中を刺激し続けることには変わらない。
それに佐助はまたあえぎ、逸物を膨らませる。
「足を俺の腰に絡ませろ。ちゃんと支えているが、おちるないようにな」
「はい……」
幸村の腰に細く白い足をからませる。
幸村は佐助の腰と背中をしっかりと支え、佐助に耳打ちした。
「このまま宿直室にいくぞ」
「……え?」
佐助は己の耳を疑った。
幸村は、今なんと言った?
「そ、な……冗談じゃ……」
時計の針は八時を回っていた。
人はほとんどいないだろうが、もし、人と出会いでもしたら……
それに、こんな格好のまま歩かれたら、体にくる負担は半端じゃない。
「や、そんな……やめ……」
「ん?それだけじゃ短い?もっとしていてほしい?それでは一緒に校舎を巡回しようか」
繋がったままの、この格好で。
「だめっそんなっいやだっ」
佐助が叫ぶと、突然幸村は片足をあげ、佐助の中へ深く挿入してきた。
勢いがあるそれは奥をつき、佐助は泣き叫ぶ。
「あまり俺に逆らうな。逆らえる立場だと思っているのか?」
幸村の問に、泣きじゃくりながら佐助は首を振る。
「思ってない……」
「それならばいいのだ」
幸村は横柄に頷き、歩きだした。不安定な体勢は、一応支えられているとはいえ恐怖を煽る。
足に力をいれ、幸村の背に腕をのばし抱きつく。余計に幸村を強く感じてしまうが、それは仕方のないことであった。
「まずは電話だな」
そう言って向かうのは理科室の隣にある教師が仕事をする小部屋だ。
そこに幸村の荷物がある。
幸村が歩くたびに中のものが動くため、佐助の気が休まる暇などない。
「あっあんっあっ」
定期的なリズムで中をかきまわされる。抜けてはつき抜けてはつき、それに佐助の蕾が堪えきれず収縮すると上下に動きにくいかわり左右に揺さぶってくる。
ぐにぐにと太いものが中でまわるような気がして、佐助は幸村の背に爪をたてた。中でうごめくものから逃げたいのに、逃げられない。
たった数メートルの距離が永遠にも思えた。
体中、汗が伝い落ちている。汗をすったシャツが少し重く感じる。
それとも、疲労感のせいで体が重く感じるのだろうか?
幸村にしがみつく足も腕も、既にいたくなりはじめ、力がこもならなくなってきている。
幸村は立ち止まり、佐助を机の上に倒す。整理された机は佐助一人の体を置くには十分だった。幸村は片足を机に立て膝をつき、椅子に片足を置く。佐助と少しでも繋がり易い体勢を取る。意地でも結合をとく気はないらしい。
幸村は机の上に置いておいたケータイを力のこもらない佐助の手に持たせる。
「ほら、家に電話しろ」
「……うん。ね、旦那……せめて……電話してるときくらい……」
駄目で元々と懇願すると、わかっていたことてばあったが、深くうがたれる。
「揺さぶられながらしたいか?早くしろ」
冷たい声音で言う。
冷酷な瞳は、彼が怒っているときのもので、このときの幸村に逆らえば逆らうほど痛い目を見ることを思い出し、震える指で黙って電話番号を押した。
呼び出し音を聞きながら、(あの時つよく拒んだのがいけなかったのだ)と思い返す。挿入のときに強く拒まなければ、幸村はここまで酷いことをしてこなかっただろう。
これは仕置きなのだ。殴ったり叩いたりするより、よほど効く仕置き。
猿飛佐助は真田幸村を拒んではならず、逆らってはいけないたのだ。
それを破った、当然の"体罰"。
佐助はそれをおかしいとは思わない。
今も昔も、幸村は佐助の主なのだ。
(魂に刻まれてるんだ)
流れる血。姿形が変わっても、それだけは変わらない。
猿飛佐助という記憶持つ魂な限り、佐助は真田幸村という魂に従う僕(しもべ)なのだ。
(その思い込みと執着を、人は……)
何と呼ぶかは考えたくない。
佐助は常の状態では考えないようなことをうつらうつらと考える。
電話ごしに母の声が聞こえ、ようやくはっとした。
『はい。もしもし』
「あ、……母さんっおれっ」
中に男の熱と存在を感じながら、平静を保つのは難しい。
上擦る声を隠せない。
『佐助?どうしたの?そんなにあわてて?』
息子の声にそんな疑問を抱く。まさか、まだ十五にもならない息子が、十も離れた教師に犯されているせいだとは夢々思うまい。
この電話の最中も、幸村の脈打つものを狭い"中"で感じ取り、佐助は自然、息が荒くなる。
「母さん……きょうっ友達んちに泊ま、るから……っ」
駄目だと言ってくれ!と佐助は心の中で祈ったが、彼女はあっさりと了承してしまう。
「いいわよ。楽しんできてね。家の人にちゃんとご挨拶するのよ」
「わかっあっ……!」
た、と言う前に佐助は電話を切る。幸村が唐突に律動を始め、声が裏返ったからだ。
「ひ。うごかないでぇっ……!」
ぐちゅぐちゅと中を太いものが行き来する。その感覚だけで気が遠くなりそうだ。
「うわっあっああ……だんなっだんなあっ」
嫌々と首を振ると一層激しくなった。
「お前の中はやけに熱い……
気持ちいいな……」
幸村は佐助の耳もとで囁き、動きをぴたりと止め、佐助をまた抱えあげた。
「うああ」
固いものが蕾の肉壁を強く擦る。眩暈がして、吐き気がして、"花"が咲いた。蜜をこぼして佐助の指先までぱあと散らす。
甘い痺れが波のように打って、佐助の筋肉はだらしなく弛緩した。
幸村の支えがなければ尻から冷たい床に叩きつけられるところだ。
佐助は安定しない格好の恐怖から、もう休ませたい手足を、幸村の体に接着させた。
ともすれば力が抜けずるずると落ちそうになる。
「ひっごめんなさいっごめんなさいっ……もう、勝手なことしませんからぁ」
「明日一日この格好のままいるか?」
「そっなっやあ……」
拒めば拒むほど幸村は佐助の体に鞭打つ行為を平気で行ってくるというのに、佐助は反射的に拒んでしまう。
情交によって飴を舐めるのはいつだって幸村だ。
佐助は体中の悲鳴を聞きながら、幸村を満足させなければならない。
貪欲で残酷な佐助の主は、貪り食い散らす。
その残骸を佐助は己で集めて、また残りかすのような己をまた主に捧げる。
疲弊するのは主に食われる佐助で、佐助という蜜を食事する幸村は更に英気を蓄えさせる。
行為を続ければ続けるほど、佐助は"最悪"に近付く。
(死んでしまう……ああ、けれどどうしようもない)
俺を満たす狂気の蜜は、繋がる貴方ごと狂わせている。
狂暴で淫猥な行為へと導き、苦痛と嘆きの交わりの原因を作るのは俺なのだ。