「誰がっ」

いうことなど聞くものか。

幸村は凶悪な双牟で吐き捨てる。
幸村に話しかけてきた先輩ふたりはそれに怯む。

彼らの中の幸村のイメージは、花も恥じらうほど愛らしく、か弱いお姫さまである。

睨み付けられるなど予想外だ。

しかしそんな姫も魅力的でかわいいよね、と躊躇わず思ってしまうくらい彼らは
幸村に虜だ。

まあ、彼らの本音からしてみれば幸村の中身なんてどうでもよく、花よりも愛ら
しい見た目の少年を自分たちの思うままにしたいだけなのだろうが。

しかし彼らには誤算がある。

幸村たちが彼ら程度ならものの数秒でのせるということを、全く分かっていない
のだ。

一年で悪名高い政宗の存在に気付いていないところから、彼らの危機管理能力の
低さがうかがえる。

圧倒的に有利な状況で弱者を踏みにじることに慣れており、自分たちが優勢で、
幸村を含めた後輩がそれに恐れいり自分たちに従うと信じて疑っていない。

思いあがりも甚だしい連中である。

「あのさ、先輩にそんな口きいていいと思ってんの?」

反抗的態度の後輩に(幸村除き)に苛立ちながら迫力がない脅しをする。

それに全く動じない一年たち。慶次などにこにこと余裕の笑みを浮かべている。

佐助だけが、状況に戸惑っている。何故守られるような位置にいるのか今だわか
らないのだ。

ひとりの少年が動いた。

「っうざったいなあ。いいから来いって」

ぐいと乱暴に腕を引かれた。
幸村は掴んできた手素早くひねり、外す。目にもとまらぬ動きに少年たちは目を
まるめた。

「あたたっ」

手首をひねりあげられて、情けない悲鳴をあげる。

幸村がぱっと手を離すと、彼らは二、三歩後退した。

「何しやがるっ。それが先輩にたいする態度か!?」

そのとき彼らのなかで、幸村への態度が愛らしい姫君ではなく生意気で腹立がつ
もの一年に切り替わった。

「敬意を払えとおっしゃりたいのですか?」

幸村は慇懃に訊く。
当たり前だと少年たちは怒鳴った。
ふ、と幸村の目に強い意思が浮かび上がった。

ひとの意思を無視し、自分の勝手でひとを支配しようとする人間に払う敬意など
まったくない。

「敬意を払ってほしければ、それなりの姿勢というものがあるはず。その片鱗す
ら感じないお前たちを先輩など呼べるものかっ」

幸村の今までたまりにたまった苛立ちがこの瞬間爆発した。

姫とは言え、年下。

自分以外は格下と見る彼らにこの暴言が許せるはずがない。

「……言ったなっ!」

怒りに任せて幸村に掴みかかる少年……は。

鈍い音とともに宙を飛んでいた。

政宗たちが手伝う必要もなく、幸村は少年たちを地に伏せさせた。

少年たちが倒れたはずみで、ちいさな紙が一枚、ハラリと落ちる。

慶次はそれに興味を引かれて拾った。

「……スノウ」

書かれていた単語を読む。

「雪か」

「……雪だな」

「雪だね」

これは、『宝探し』のヒントだろ。

ヒントというだけあって、抽象的だね。
佐助はぽつりと呟いた。
小太郎はこくんと頷く。

「……いやーな予感がするのは俺だけかな?」

慶次は顎をしゃくりながら、苦いものをにじませる。
佐助はそれに顔をしかめた。

「なんとなくその予感がするから……勘違いにしたかったんだよね」

政宗は愉快げに口をきれいな三日月に形つくる。

「当たりなんじゃねえか?」

その視線の先には、気絶している少年が握っている紙。
慶次は早速それを手から抜きとるとみんなに見えるように広げた。

『プリンセス』

予感は現実になりつつあった。




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