その日、寝苦しさから幸村は目覚めた。

油汗が肌を伝う。体中がべとつき、胸が荒く上下した。全力で走りきったような疲労が幸村を襲った。

まだ暗く、夜の闇が濃い時刻である。

それが幸村の中に生まれた不安を増幅させた。

幸村は嫌な夢を見た。その内容は覚えていないけれど、とにかく嫌な夢だった。
目覚めた今でさえ、吐き気を覚える醜悪な夢。

幸村は一人でいるのが嫌で、佐助の名を呼んだ。

彼なら自分を抱き締め、この不安と恐怖を消してくれるのではないかと思った。

しかし、返ってきたのは、望んでいた声ではない。

「幸村さま、今佐助は自室におります」

佐助の代わりの護衛が幸村に教えた。

そうか、と彼は頷き、佐助の部屋へと向かった。

***

「……ふぅっあっ………くっっ。あぁん!!」

腰を揺さぶられ、穴を掘られ、肉壁を何度も何度も擦られる。

何度も出し入れされるそこは、太いのが動くたびに点々と血の粒が飛ぶ。

「……いや!だめえぇぇ!!」

佐助は叫ぶが幸村は動きをやめない。

むしろ佐助の悲鳴を肴に、楽しんでいる節があった。
「まるでおなごのようだなあ。佐助。もっと鳴くがよい」

がんがんと腰を佐助に叩きつける。
そのたびに佐助はいやいやと泣きわめいた。

早く終わって……!

佐助は祈るが、それは祈るだけで終わる。

毎日のように佐助に処理をさせ、溜るものなどないはずなのに、幸村は限界を見せない。


「淫乱な尻の穴だ。俺をくわえて放そうとしない」

くつくつと笑いを落とす。
その台詞に佐助はまた幸村を絞めてしまい、幸村を喜ばせた。

「はは。佐助は俺のを食い千切る気か?」

亀頭が蕾の出入り口に触れるまで一気に抜くと、それを勢いよく佐助の中に叩きつけられる。

殺されてしまうのかと錯覚するくらい、幸村は佐助の中で暴れた。

佐助はすがるために、爪を床に引っ掛けていたせいで、何枚か爪を矧がし、血を流していた。

その痛みが気にならないほどの下腹部の激痛。

幸村の悪魔の所業は終わらず、更に佐助に責苦を課す。

「佐助、好きなだけ吐き出してよいのだぞ?どうせ風呂場だ。掃除をすることもないだろう」

幸村はそう言うが、佐助の熱の捌け口は彼が縛った紐により封じられている。

佐助が狂ったように暴れるのはその為である。

幸村の片手は感じろとばかりに佐助の竿をこすっているのに、その快楽を吐き出すことも許さない。

「お願いいい!!だんなあ!!も、許してえええ!!」

「許すもなにも、俺は佐助を責めてはおらぬ」

幸村は淡々と答えると、佐助のものを強くこすった。
佐助のそれはぱんぱんに膨れあがっているが紐によりきつく閉じられている。その刺激により、佐助の欲は今まで異常に解放を求めた。

「お願いぃぃ出させて!出したいの!!!なんでもいうこときくからぁぁ!!」

佐助の懇願に幸村は尚も楔を打ち込むだけで、聞き届けやしない。

「言ったろう?佐助。俺が飽きたら、好きなだけ吐き出していいと。それを待てばいいだろう?」

嬉しいだろう?と幸村は残酷に問う。

やけに饒舌だった幸村の口がぴたりと止まる。目を吊り上げ、今まで以上に激しく腰を揺さぶり始める。

「ダメえダメえっっ!!!」

気持ちいいっっっ!!気持ちいいよお!!!!

快楽にだけ身を任せ、熱を吐き出したい。

けれど佐助の中には快楽によって産まれる苦痛がたまっていく。

「佐助………!!」

幸村の切なくも熱い囁きと共に、佐助の中に熱が放たれた。

「あ、あ、あっ……」

その衝撃に佐助の体がぐたりと傾ぎ、びくびくと痙攣する。

それを色に染まる目で見下し、ただ一言。
「佐助はだらしないなあ」
幸村は子供染みた無邪気な笑みを浮かべ、ようやく佐助の中から自身を抜きだした。

佐助はくたりと風呂場の床につく。

泣き濡れる佐助を見かねて、幸村は佐助を仰向けにさせると、欲情をその手に掴む。

ようやく解放されるのかと、佐助はほっとする。しかし、幸村が取った行動に佐助は目を見開く。

幸村は佐助の固くはりつめたそれを口にくわえてから、抑えていた紐を解いたのだ。

「だめっ旦那!出してぇ!」
佐助は足をばたつかせるが、幸村の両腕に捕えられる。

はりつめた佐助の熱は、幸村がちゅく、と先端を舐めるだけで弾けた。

「……ひゃああああ!」

ずくん、と体の底から込み上げてきた無茶苦茶な射精感に頭がついていけない。

やっと解放される喜びに震える竿は、自分のものとは思えぬほど、熱を放出しだす。

理性で性欲を統制する佐助には、理解出来ない体の熱。暴走する性器。

「放して!放してえ!!」

頭を何度も振り、拒絶を必死に示すが、幸村は我関せずと佐助の白濁を全て飲み込んだ。

幸村は精液の青臭いにおいと苦い味に顔をしかめる。しかし、佐助のものを決して口から出そうとせず、全てを絞り取るように愛撫する。
「やああっ!」

佐助は幸村の口内で何度も達する。それを漏らさず自分の中に取り込む幸村。

「う、うあああ」

その奇行が信じられず、佐助はついに声をあげ泣き始めた。

哀れに泣き喚く佐助に、

かつて、自分がよく佐助に泣きついていたことを思い出し、それに自分の姿を重ねる幸村。

かつてそれに応じた佐助よりも優しい笑顔を浮かべて、佐助を抱きあげた。

「泣くな……」

と穏やかに囁く声は、佐助を泣かせているのが自分だと気付いているのか、いないのか……


「この前も言ったであろう?泣くと、受け入れるのが辛いぞ」

幸村はそう言って、佐助の手を握る。指を絡め、更に佐助と深く繋がろうとしたのだ。

その時彼は、佐助の爪が剥がれていることにようやく気付いた。

「ああ、全く……」

幸村は怒るでも心配するでもなく、佐助の体を抱きあげて風呂を出た。

体もふかず、腰に布をまいただけで脱衣所を出る。

寝静まった屋敷の廊下では誰ともあわず、幸村の部屋に辿りついた。

敷いてある布団に、ぐったりとした佐助の体を預ける。

幸村は薬箱から白い清潔な布を取り出す。

佐助の指をゆっくりととり、低く落ち着いた声で話始めた。


「昔の夢を見たのだ……」

男のものにしては細く、女のものにしてはごつごつした白い指。小さな傷の残るそれに、真綿で首を締めるように幸村は白い布を巻く。

爪を失っした指から、鈍く痛みが生まれる。
甘いうずきにも似た、神経の反射。

嗚呼、と佐助は息を吐く。それは獸(けだもの)にどろりと絡みつき、徐々に煽る艶めいた吐息。

「恐らく十二の時であろうか……俺は嫌な夢を見て、目を覚ましたんだ」

白い布地に、佐助の赤が彩る。それは処女を褥で抱いたあとに布団に残る血と、同じ赤。

愛しい色だ。

佐助の蕾からこぼれる赤は、とても美しい色だ。

佐助の破瓜が、幸村の挿入の度に弾ける。挿入の度に何度も佐助の処女を奪い、犯すのだ。

男性の排泄器官は、男の性器を受けいれるために出来ているわけではないから、ぐいぐいと締め付けてくる。

それは、性に疎く、初めて男性と交わる処女の締め付けに似ていると幸村は思った。

「その時、あまりに恐ろしくて、一人になりたくなかったんだ。佐助を呼ぶが、返事をしたのは違う忍であった。俺はそやつに佐助の居所を尋ねた」


細い体になぶるように視線を這わす。見た目とは裏腹のこの屈強な体は、どれほど熱を注げば壊れるだろうか?

「部屋にいると、忍は答えた。俺は躊躇いもせず、お前の部屋に行った……」

この体は子供を産むという厄介なことにならないから、好きなだけもてあそべる。

何時だって、その中にあるのは幸村の熱だけ。

それが幸村には嬉しい。

自分以外の命あるものが、佐助の中に在るということは起こり得ないのだ。

例え二人から出来た命でも、真に執着している者であれば、執着の対象に中に自分以外の者が在ることが許せないものだと、幸村は思ってしまうのだ。

佐助の中の熱は、己だけが知ればいいと思う。

「佐助、何をしていたか覚えているか?」

佐助は顔を蒼白にして首を振った。

「嘘を吐くな……」

みしり、音がするほどと幸村の手が佐助の手を強く握った。

萎えた性器に、佐助の手を無理矢理這わせる。

「ここおったてて、自らの手でしごいていたよなあ、佐助?」

幸村は狂暴な瞳で佐助を見つめる。

なんだかそれは、幸村が幼い頃、大切なものを無くして憤ったときの目に似ていた。

「荒い息をして、この手でしごいて、汗をかいて、虚ろな目をして、誰の名を呼んでいたかっ覚えておるか、佐助!?」

ひっと佐助はか細い悲鳴を上げる。

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

続く幸村の声を覆うように佐助は謝る。

だが、幸村は口を閉じない。

「俺の名を呼んでいたであろう!?」

幸村は怒気を露に叫んだ。
そして佐助の両足を広げ、中に楔を打ち込む。

幸村の白濁を残しているが、無理に突っ込んだため、そこは裂けた。

佐助は苦痛にうめく。

幸村は気にせずに奥まで進める。

「なあ、佐助。お前は頭の中で何度俺を抱いた?穴に突っ込んだ?口で奉仕させるところでも想像したか?それでイったのか?白濁で幾度俺を汚した?なあ、佐助?」

怒りに身をまかせ、幸村は腰を激しく揺さぶり始めた。

最初は痛みに耐える表情であった佐助が、酒に酔うように頬を紅潮させ、瞳をとろけさせる。

今、自分が幸村につきつけられている真実を忘れ、快楽に溺れる。

我を忘れてあえぐ佐助を見下ろし、幸村は問う。

「まだ十二の子供を汚すのは楽しかったか?俺を弟のようだと笑っていたその口で、俺をなぶったのか?快楽を貪ったのか?今の俺のように足を抱えて入れたか?組敷いて入れたか?膝の上で入れたか?泣かせたのか?あえがせたのか?」

佐助の中で何度となく犯される自分。

少年はその事実に矜持をずたずたに破戒され、自分が何か汚らわしいものになってしまった気がした。

佐助の竿を扱く手。
(俺を優しく撫でてくれた手で)

幸村の名を切なげにもらす唇。
(優しく俺の名を呼ぶその唇で)

淫乱な雄が宿る瞳。
(いつも穏やかに俺を見守るその瞳で)

俺を犯し汚すのか。

裏切られた気がした。

信じたくなかった。

(俺はあんな汚いものに愛されて守られていたのか。あんな腕に抱き締められて喜んでいたのか)

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!

それはまだ性的に幼い少年につきつけるには、あまりなも過酷な真実であった。
幸村は目の前の現実を拒絶し、瞳を閉じた。

(忘れていた忘れていた。でも思い出した。佐助と交わることで見た、佐助のあえぐ顔が、思い出させた……)

幸村は佐助を揺する。憎らしく愛しく心をかき乱す人。

「なあ、今どんな気持ちだ?抱いてやろうと思っていた子供に突っ込まれて、あえがされて、泣かされて、いいように遊ばれて。悔しくはないか?屈辱を感じないのか?」

佐助は、幸村の問いに答えない。答えられない。そもそも聞いていなかった。

理性を失ない、幸村の熱に夢中になっている。

幸村はそんな佐助に、返事を求めることを諦めた。

投遣りになりながら、佐助を犯す。

「くっ……はっ……」

肉の壁にこすりつける感触に、性感帯が刺激される。
幸村はやがてそれに飲まれるように荒い呼吸をしだし、佐助の中に熱を放った。
理性も言葉も失った二人は、獣のように交わり、淫楽の限りをつくし、日がのぼる頃にようやく果てた。








続く