下卑た笑いを浮かべる男たちの声。
「聞いたか?あの忍の声を?」

「聞いた聞いた。あの女みたいな声だろ」

彼らは屋敷に常駐する使用人は屋敷の守人である。

「やめてやめてって処女でもあるまいしなあ……」

「まったくだ」

はは、と笑う男たちの声が、障子戸を挟んで聞こえてきた。

(……うるさい)

心の中で佐助はうめく。通常の状態であればひと睨みして黙らしてやるものを……

佐助は布団の中で、腰の痛みに一人耐えていた。

ろくに寝ていないはずの幸村は、佐助に暗い影を作る笑顔を浮かべ、「今日も可愛がってやる」と囁いた後、佐助を部屋に残して出ていってしまった。

佐助の中にあった幸村の精液は幸村自ら掻き出したから、後で腹を下す心配もない。

しかし、幸村を受けいれ続けた蕾と腰は、ずきずきと痛みを訴え、ろくに動かせない。

蕾の括約筋が弛んでいるような気がするのは、気のせいだろうか?

下半身の痛みのせいか、頭が朦朧とする。

普通であれば考えないようなことを、つらつらと思い浮かべる。

(今まで散々男にやられてきたけどさ……)

あんなに大きいのは……

(初めてだ……あんなの反則だ……)

感触を思い出し、佐助はうめく。

ずぐん、と佐助の中から溢れそうなくらい幸村で満たす。

全部入れるなんて無理なのに、無理矢理佐助の中に侵略して、その上激しく中で動くのだ。

(あれで成長期なんでしょ?もしかしてあそこまでおっきくなるつもりなの?)

幸村は、佐助よりもまだ指一本小さい。

それなのに……

まだ、成長するのだ。

(中だって裂けるよ。そりゃあ)

将来、幸村の妻になるものに同情する。

あれを受け入れるのは、さぞかし辛かろう……

しかも、果てが中々来ないと来ている。

今日とて、朝が来てから物足りなさそうに抜いて佐助の中から掻き出し、僅ながらの睡眠をとって布団から抜け出したのだ。


(でも、気持ちいいんだ……)

狂いそうなくらい、長く、激しい快感を与えられた。あえぐことしか出来なくて、途中で佐助は出すものも出しきってしまった。

しばらく自慰行為は不要だろう。

も、触ってもたたないや……)

佐助のぼんやりした意識がまどろんできた。昨夜からにかけての無理が、代償のように佐助に眠気を与える。

(あんなに、気持ち……良かったの……思い出して、る……のにな……)

全く反応しない。

(……男に、抱かれて、あんなに……気持ちいいって、思ったの、初めて……)

懲りずに蕾がうずいた。

雄が膨張しないかわりに、やけにそこが動いている。
収縮をくり返し、幸村を求めた

(……また、やってくれるって……さっき……旦那が……)

幸せそうに佐助は微笑む。
ちょっと我慢すれば、また気持ち良くなれるんだ……
たった二回、幸村に抱かれただけで、佐助の体は幸村の与える熱の虜になっていた。

瞼が落ちてきて、トロトロと夢の世界に堕ちていく。
(……そいや、昨日……旦那……怒ってた……なん、だっけ?)

眠くて、眠くて、思い出せない。

なんだかとても大事なことな気がした。思い出さなきゃ、と呟くがまともに脳が働かない。

(別に……いいや……)

思考を放り投げて、佐助は完全に瞼を閉じきり、意識を手放した。

*

夕方になって部屋に戻ると、佐助はまだ眠っていた。

その傍らに座り、橙の髪を撫でる。柔らかな感触がやけに気持ち良かった。

「今日はきちんと答えて貰うからな……佐助……」

ふふと口角に笑みを刻む。
この、何処か清らかな風情のある忍の快楽に乱れた姿を見るのは楽しい。

幸村は佐助の肩に手を置き、揺さぶり起こす。

「起きろ、佐助」

十分過ぎるほど睡眠を取ったこともあってか、佐助は忍の反射で飛び起きる。

はっと勢いよく上体を起こす。勢いが強すぎたせいで、まだ痛みが癒えきっていない下半身が相当に痛んだ。

「……!!」

佐助は声にならない悲鳴があげる。

戦場で負う傷とは一戦を画す痛み。

佐助のその様子にくつくつと幸村は笑う。

「その様子では、今夜は大分きつそうだな」

佐助の肌を隠す布団を捲り、裸の体に乗り掛かる。

「可哀想に」

気遣うその傍らで、幸村は着物を脱いでいく。

言葉と行動の矛盾は、幸村にとってはどうでもいいらしい。

裸の幸村と佐助は正面から向き合う。佐助の顔は不服そうに歪んでいた。

「あのさ、今日は辞めておこうっていう優しさはないの?」

夢心地で自分が思っていたことなどすっかり忘れている。

体は幸村は求めていても、心は幸村を求めていないと言ったところか。

「ないな」

幸村は起こした佐助の体を布団に倒させる。それに覆い被さるように口を開く。
「佐助、問いの答えは用意したか?」

「問い?」

佐助は首を傾げる。

「やはり忘れておるな……」

幸村は佐助の耳に唇を寄せ、ぼそぼそと囁いた。

佐助の瓢々とした様子が瞬時に一変する。

恐怖に全身をひきつらせ、唇をわなわなと小刻に震わせた。幸村の下から逃げ出そうと必死に幸村の体を押し退けようとする。

がりがりと畳をひっかく。昨日の傷の痛みが走るが、そんなことを気にしている余裕はなかった。

(旦那は知っているんだ……)

(俺のおぞましさと浅ましさを知ってるんだ……)

(俺の罪を、咎を知ってるんだ……!)

「ひっ許して……許してえ……」

佐助は壊れた人形のようにそればかり繰り返す。

「許すも何もないさ」

幸村は佐助の閉じきった蕾に雄を押し付けた。

「ただ、知りたいだけだ」
幸村は、侵入を拒むそこへ分け入った。。

「なあ、お前は頭の中で何度俺を抱いた?」

……ず……ずず……

中を犯される音を、耳が拾った気がした。

「ごめんなさい……!」

佐助は髪を振り乱す。

「何度、穴に突っ込んだ?」

佐助の肉壁がこれ以上の侵入を阻むように中を締め付ける。それでも幸村は無理矢理進めるから、佐助に更なる痛みを与えた。

「ふっ……あっあっ……ご、ごめっ……」

「口で奉仕させるところでも想像したか?それでイったのか?」

ぐちゅ……ぶちり……

「は……あう!!」

裂傷が走る音がした。佐助はそれにうめく。

「白濁で幾度俺を汚した?」

幸村自身が佐助の蕾を満たしていく。結合部から血がつ、と静かに滴った。まるで涙のような一筋の流れ。
「まだ十二の子供を汚すのは楽しかったか?」

幸村は完全に佐助の血を潤滑油がわりに、更に奥深くまで進めながら、荒い呼吸を繰り返す佐助を見下ろす。

「ゆる……して……ごめ、……なさ、いっ」

「俺を弟のようだと笑っていたその口で、俺をなぶったのか?」

佐助の口からだらしなく唾液が垂れる。弱々しく首を振り、脅え、赦しを求める姿は、戦場で風のように駆ける忍の面影がない。

「快楽を貪ったのか?」
「今の俺のように足を抱えて入れたか?」
「組敷いて入れたか?」
「膝の上で入れたか?」
「泣かせたのか?」
「あえがせたのか?」
「なあ、今どんな気持ちだ?」「抱いてやろうと思っていた子供に突っ込まれて、あえがされて、泣かされて、いいように遊ばれて。悔しくはないか?屈辱を感じないのか?」

「許してっ許してえ!!……も、うっころしてええ!!おれを殺して!!!!」

佐助は殺して殺して、と何度も泣き叫び懇願した。

「うるさい!!」

幸村は怒鳴りつける。

「何度も男に抱かれているくせに、今更純情ぶるのか?汚れきった体のくせに今更拒絶するのか?体を売る女より質が悪い男だな、お前は」

ずちゅ、ずちゅ。濡れた音が結合部から漏れ聞こえる。

佐助の血と幸村の先走りが中で混じりあい、閨の淫猥な調べを奏でているのだ。

「や、やだ。だんな……うご、動かないで……やめて。殺してよおお!!」

「気持ちいいんだろう?感じるんだろう?男に犯されて何が愉しいんだ?何処がいいんだ?お前の体は本当に淫乱だな」

幸村の腰の動きが一層激しくなった。

「いやっだめっやめてっっあ!いたいよ!……だめえ!!」

佐助は苦痛に叫ぶ。

「痛い?そんなものなんだと言うのだ!!!」

ぐちゅぐちゅと佐助の中をかき乱す。

「お前は俺を裏切ったんだ!こんなおぞましいものにずっと守られているなんて知らなかった!!」

その絶望と屈辱。
汚され、辱められた。

その、痛みに比べればこんなもの。

幸村は一際強く腰を叩きつけ、"おぞましいもの"の中で達する。

その勢いと熱に佐助は悲鳴をあげた。内蔵から全身に巡る衝撃は末端にまで痺を残し、佐助の神経を狂わせる。

「はっ……あ、う……」

苦しそうに息をつぐ佐助。
休む暇なく訪れる一方的な欲の搾取が再開される。まるで、繋がった場所から食われていくような錯覚。

そして、幸村が放った大量の精液が幸村の過酷な動きによって蕾の中一杯に広がると、佐助は狂うほどの快楽に叫ばなければならなかった。

佐助の快い所をつく幸村の肉棒。

苦痛が快楽にすり変わる瞬間。

それを醜悪なものでも見るような目で睨みつける幸村。軽蔑と侮蔑の言葉をはきつらね、それでも交わりは解こうとしない。

「……!あっあっ!!」

謝罪と贖罪を忘却の彼方に捨て去り、愚かにも快楽のみを求める乱らかな淫婦に成り果てた。

最早、例え佐助の性が男であり、男性を示すものがついていようと、女と変わらない。

たかだか排泄器官でしかないそこに、雄をねじこまれる異様な行為を当然のことのように、佐助は受け入れ、下に敷かれた。屈服される屈辱すら感じていない。

幸村に抱かれた衝撃で佐助の"男としての精神"が殺されたのかもしれない。

幸村の物を美味そうに飲み込み、収縮するそこは子を生まないというだけで、佐助の女としての役割を果たしていた。

下をうごめかせ、虚ろな目であえぐ佐助は、色気の漂う男というよりも、骨太な女のような風情だ。

かつての佐助ではありえない、与える印象の変化は、佐助の精神の変化を示しているのだろう。人の精神は見た目にもでるものだ。

幸村はその如実な変わり様に苛立ち舌打ちする。

(なんて汚く、浅ましい)

それに、狂おしいほど興奮し、今まで以上に腰を激しく強く佐助にぶつける自分に、幸村は気付いていない。

絶頂を迎え、幸村の熱が高ぶる。

「だんな……ぁ!!」

佐助が切なく鳴いた。





(……嗚呼、こんなにも汚くて醜い生き物を、俺はこいつ以外に知らない……)





幸村は、佐助に熱を思うがままに注ぎこんだ。


*

自身を抜き出し、佐助に体重を預ける形でのしかかった。

(佐助の肩は、こんなにも頼りなかったか……)
最初に、佐助を抱いた時も、そう思った。抱き締める背中のなんと頼りないこと。

(愛しい)
(いとしい)
(いとおしい)

だからこそ、佐助の醜い部分が許せなかった。自分を傷つけた昔の佐助が憎らしかった。

「獣よりも下等だな。子を成さない行為に、何故そんなに夢中になれる?」

佐助は謝ることも許しを乞うのも止め、めそめそと泣く。
その姿は、子供というよりも都合の悪いことは泣いて誤魔化そうとする、弱い女のようで……

(何故、こんなにも、お前は汚れているのに……)

綺麗なんだろう……

「佐助はいつも泣いてばかりだな。泣いてどうにかなるわけでもあるまいし。いい加減泣き止んだらどうだ。ん?」

幸村のために、また破瓜の血を流した蕾をなぜる。

(何故、こんなにも汚いお前が)

心を掴み放さないのだろう。

切ないほどに捕われている。

憎んでも、憎んでも足りないくらいなのに。

愛しい。

抱くことが嬉しくて愉しくて気持ちよくて快感で、たまらない。


佐助が、狂おしいほど美しく清らに見えてしまうのは、それを汚すことに快感を覚えてしまっているせいだろうか?

かつての自分が汚されたように、佐助を汚しているのだろうか?

幸村には判断がつかなかった。


ただ、ひとつ言えるのは……



(俺は、もう、佐助の腕から逃れたい……)



幸村を守る為に囲われた腕。
そこから逃れたかった。


『こんなおぞましいものにずっと守られているなんて知らなかった!!』


幸村の感情を如実に表した、この言葉。


佐助に守られれているということが、嫌だった。