足の根からは血や男の体液が溢れていた。

目には涙のあとがくっきりと残り、男たちを拒む意思を表す為に何度も頭を振ったせいで髪は乱れていた。
その、無惨な姿。

何があったのか瞬時に悟り、幸村はすぐに佐助の元へ駆け寄る。

肌に触れて、血が引いた。

何時もは冷水に触れているのではないかと思うほど冷たい肌が、やけに熱かった。

裸の胸は忙しく上下している。穏やかな呼吸を忘れた口は、苦しげに脆鳴を繰り返している。

「佐助……!」

元々発熱していたところに、男たちの凶行が加わり、この季節に裸のまま放っておかれたため、佐助の体は異様に熱を帯びた。

「大丈夫か!?」

佐助は返事をしない。
嫌な予感が頭をよぎって幸村は叫んだ。

「才蔵!すぐに来い才蔵!!!」

悲痛な叫び声が屋敷中に響き渡った。


***

「熱は高いですが、死ぬほどではありません」

才蔵は淡々と答えた。

医術の心得がある才蔵は佐助の容態を心配することのほどでもない、と断じ、幸村に言う。

「体に蓄積した疲労が主な原因でしょう。言ってはなんですが、二日も連続で抱くのは、佐助の体に負担となります」

以後、おひかえください、と美貌の忍は言った。

わかっている、と苦々しく吐き捨てる。

そして佐助が無事と分かった今、猛火のついた心を押さえることが出来なかった。

「一体、誰がこのようなことを……!!」

見付だし、必ずこの手で殺してやる!!

幸村の怒りは燃え盛り、ちろちろと幸村の周りに火花が見えた。

佐助が傍らにいなければ、火柱を発し、屋敷のもの全てを焼き殺していたかもしれない。

才蔵はそれに眉をひそめ、「くれぐれも佐助には被害が及ばぬよう、お気を付けてください」
頭を下げる。

佐助と違い、臣下の礼をとる才蔵。その彼に、幸村は声を落とした。

「才蔵。佐助にろうぜきを働いたものたちを探し当てろ」

幸村の端的な命令に、才蔵は頭を下げたまま、御意。と応じた。

「必ず見付けだし、処分いたします」

才蔵の言葉に、幸村はいや、と首を振る。

「俺の手で、殺してやらねば気がすまん。見付けても、何も手を下すでないぞ」
氷のように冷たい声に、才蔵は否と首を振りかけた。
(戦以外で貴方の手が血で汚れるのは、佐助の望むことではないだろうな……)

しかも、自分が原因となれば……

それを知れば、佐助は心を痛めるだろう。

しかし、才蔵は幸村の命令に従わなければならない。
それが忍の定なのだから。
**


「……う、ううん……」

熱にうなされていた佐助が、ようやく目を開けた。

探るようにうるんだ瞳をさ迷わせると、幸村と視線がかちあった。

佐助は目の前にいる幸村をぼんやりと見つめ、旦那……と呟いた。

「佐助……っ。大丈夫か?」

幸村は佐助の手を掴んだ。
「う、ん……なんか……苦し……かも。で、もへいき……」

頬を緩ませ、佐助は笑んだ。
痛々しささえ感じる綺麗な笑みだった。

幸村は鈍い痛みを胸に覚えた。

「才蔵が薬を置いていった。それを飲めば楽になるぞ」

「ん……」

「佐助、横になっていろ」
起き上がろうとする佐助の肩を、幸村は抑える。

「飲ませてやるからな……」

幸村は薬の苦い味を舌にのせ、佐助の唇にふれた。口移しで佐助に薬をのませる。

こくん、と佐助の喉が薬を飲み込むのを見て、名残惜しそうに唇を離した。

「……だんな……もっと……」

佐助は口から舌をのぞかせ、もっととねだった。

最初はもっと薬が欲しいのか と首を捻ったが、佐助が口付けをねだっているのだと気付くと、幸村の体には熱が篭った。

吐き出せない熱が、吐き出したい熱が、体に、下脚に、溜っていく……

幸村は、理性を総動員して、首を振る。

「熱が出ているのだ。接吻などしたら、お前が苦しくなる」

恐らく、佐助が望んでいるのは、触れるだけのものではなく、舌を使う深いもの。

ただでさえ呼吸が楽に出来ない所に、奪い合うような口付けなど出来ない。

幸村の拒む言葉に、佐助は悲壮な表情を浮かべる。熱で苦しむそこへ、悲しげな表情をする佐助。

それに幸村は罪悪感を感じ、触れるだけなら……と佐助にもう一度口付けた。

ふう。と佐助の苦しげな吐息が唇に触れた。

その位置で、佐助と目を合わせる。

妖艶な色気を放つ瞳が幸村を見つめていて、背中がざわついた。

「もっと……」

佐助は再度口を開き、舌をのぞかせた。




……幸村を誘う姿に、雄がむくりと起きあがる。




「やな……夢見たんだ……」

佐助は辛そうに言う。


眦から、涙が一筋こぼれた。




「旦那以外の男に……抱かれるの……」


幸村はその言葉に、心臓を捕まれたような衝撃を食らった。


それは、最初から理解していた。けれど、佐助の口からそれを再度聞き直すのは、幸村中に痛みと、我慢出来ない憤怒と憎悪を生んだ。




「何回も、何回も、男たちが俺の中に吐き出したんだ……」




佐助はすがるように手をのばし、幸村の着物の袖を弱い力で掴んだ。

きっと、それが今の佐助の精一杯の力なのだろう。





「……佐助。もう言わなくてもよい……。それは夢なのだ。忘れるが良い。忘れるが良い……」

幸村は佐助を抱き締めた。



幸村の腕に包まれる安堵感。それが佐助に涙を流させる。




「旦那……」


佐助は緩慢な動きで、幸村の背中に腕を伸ばす。




そして、幸村にねだった。




「抱いて……」




その、小さな呟きに、幸村の体はかあっと一瞬で熱くなった。

「よせ……」

幸村は佐助の顔を包み、大人が子供をいいきかせるように、優しく諭す。

「その体で抱かれるのは辛いであろう?」

汗でひたりと頬についた髪の毛をかきあげてやり、額にちゅ、と口付けを落とした。

「また、な……?熱が引いたら、うんと良くしてやるから」

幸村の佐助を思いやる言葉に、いやいやと佐助が首を振る。

「忘れたいの……忘れさせて……」

佐助は幸村にすがり、願う。

忘れさせて……忘れたいの……抱いて、抱いて……


そればかり、乞う。




幸村の中の一本の糸が、ぶちりと切れた。


それは、欲情がいっぱいにつまった袋を閉じる紐が切れた音。




「一度始めたら……果てるまでやめられぬからな……」

佐助は、うん、と頷く。

「いっぱいにして……俺の中を貴方でいっぱいにして……」

幸村の指が、前戯なしに佐助の蕾を探る。

「ひっ……う……めちゃくちゃにして……は……あん……ぜんぶ、わすれさせて……」



佐助の涙を流す姿が、余りにも哀れだった。

「許せ……」

と幸村は痛ましそうに眉を寄せ、佐助の中をいじる。
助けられなかったこと。こんなにも辛そうにしている体を抱くことを……

この体を抱くことを望んでいるのは、佐助ではなく幸村なのだ。

熱で苦しむ体であろうが、そこに熱を放ちたいという欲望はやまない。

せめて、少しも痛みを感じないように、ゆっくりと溶かそう。

快楽だけを感じさせて、その哀れな体にたくさんの熱を注ごう。

「う……うんっ……あ」

熱にうめいているのか、快楽にあえいでいるのか、幸村には判別がつかない。

……どちらであろうと、佐助を楽にしてやる気は、最早ない。

途中で拒まれようと、幸村は佐助を抱く。

「悪夢など忘れさせてやるからな……」

幸村は指を抜き、逸物をおしあてた。

「佐助……」

甘くうずく声で囁いて、佐助の中を貫いた。

****

「あ……あふっ……はあっ……」

ゆっくりと佐助の中を食う幸村のそれは、佐助の体の全身を痺れさせるほど存在感があり、佐助を恍惚に満たした。

やがて、緩慢な刺激に耐えられなくなった雄は、激しさを持って佐助の中を食い荒らしていく。

佐助は熱でろくに働かない頭ごとその刺激に拐われ、流されただひたすらに鳴く。

「あんっひうっっ!!あっだ、んなっっあああ」

あえぎの合間に、幸村を呼ぶ。幸村には、それが制止ではなく、もっと激しくと乞われているように聞こえ、幸村は強く佐助の中に打ち付ける。


「さすけっさすけっ」

幸村は夢中になって、愛しい者の名を呼ぶ。

佐助の中で、自分の雄が絶頂を迎える。

身を狂わさんばかりの熱が、弱る佐助に遠慮容赦なく叩きつけられる。

佐助は衝撃に小さな悲鳴をあげ、くたりと布団に倒れこんだ。




続く