なんで…
何でこんな事になってるんだろう
居心地が悪い。
とてつもなく。



何で、何でと、もう何回自分に聞いた事か。
原因なんて旦那の一言しかないんだけど。
今日も甲斐は平和で、この前勝った戦のおかげで暫くその予定も無い。
たまには書物でも読むかという旦那に、やっと真田家としての自覚が出来たかと喜んだのを覚えている。
その時ぽつりと、本当に今思い出したように旦那が言ってくれやがった訳だ。


『そういえば佐助、拙者の小さい頃、よく本を読んでくれていたな』
『あぁ、よく旦那が話をねだってきたからね〜』


今にして思う。
何でこんな事、思い出したりしてくれたんだろう。
「こら佐助、何を考えておる」
「んぁ?あー、ごめんね旦那」
そりゃ考えも飛ぶよ。
何が悲しくて俺様が、旦那の膝の上に乗らなきゃならないんだ。
それと言うのも昔、俺がまだ小さい旦那を膝の上に乗せていたのを今やりたいとかこの主様はぬかしたせいだ。
あんたはデカくなりすぎたから、俺の足が潰れちまうよと言うとそうではないと
俺が佐助にしたいなどと言ったのだ。
冗談じゃないと言う声はあっけなく無視され、半ば無理矢理座らされた。
全くもって情けない。
「しかし佐助、お前は少し痩せすぎだな」
「そう?忍だからね、こんなもんでしょ」
「そうか?」
「そうなの。それより全然進んでないけど」
「む…」
目の前には旦那が手に持つ書物。
両脇には書物を持っているのだから当然旦那の腕があって
背中にはぺたりと体を密着させられている。
ぺらり、ぺらりと紙が捲られ何となく自分も内容を目で追う。
目の前に置かれているのだからつい読んでしまうのは仕方ないと思う。
しかし内容の多さと、旦那の紙を捲る早さが釣り合っていない。
つまり早すぎる。
本当に目を向けているだけかもしれないし、実は全部頭の中に収まっているのかもしれない。
元々頭は悪くないのだ。
この人とは長い年月一緒にいるけど、未だにこの人物の本質を掴みきれていないと思う。
「ねぇ旦那、いつになったら離してくれる訳?」
居心地が悪い。
居心地が悪い。
それに、恥ずかしい。
離してくれ、頼むから。
「んー…拙者が満足するまでだな」
「それって、いつになるか俺様には全く分からないんですけど…」
せめておやつの時間までとか区切りを付けて欲しいっていうか、いっそ今にでも離して頂きたい。
あーとか、うーとか、およそ唸り声らしからぬ声を発していると肩に旦那の額が当てられる。
「佐助…拙者といるのはそんなにも嫌か?」
「え、いや、嫌っていうか…」
嫌な訳じゃない。
嫌な訳がない。
もしそうであるならば、最初から拒んでいるはずだ。
ただ、慣れない事に居心地が悪いだけで。
「うーん………ただ、慣れないだけだよ」
だから、そう言う以外に無かった。
途端、バサリと書物を落とし、旦那の手がわなないたのを見た瞬間、がばりとその手が自分の体を掻き抱く。
「っ?!!い、痛っ!!旦那、痛い痛い痛い!!!!」
遠慮も躊躇もない抱き締め方のせいで体中が痛い。
どんだけ馬鹿力なんだこの人は!!
痛い痛いと叫び、ジタバタと暴れて漸く体を離してもらえた。
全く、どうしたって言うんだ。
お陰様で出したくもない涙で目の前が歪んでいる。
「も…何なのさ…っ」
「す、すまぬ…だが、佐助が…そのような事を言うから…」
涙と上がった息で自分のしでかした事に気付き、顔を赤くしながら慌てて謝ってきた。
その、柴犬みたいな態度に弱いんだってば。
「俺が、何?」
「佐助……抱き締めても、良いか?」
…………話を聞いてるんですか?
もう何を言っても無駄かもしれないと諦め、良いですよと言うと、今度はそっと抱き締められる。
「こうされるのは、拙者とくっつくのは苦手か?」
「だから言ったでしょ?慣れないんだって」
苦笑混じりに言うと、今度はそのまま、頭を撫でられる。
「ならば、慣れればよい」
は。
「拙者は、こうしていたい」
何つー事を言ってくれるんだこの人は。
「……善処しますよ」
俺はまた、こう言うしかなかった。



終わり




すばらしすぎて、ため息がもれまするうううう!
幸村がかっこかわいくて、佐助がかわいくて、旦那も佐助も最高です!

佐助も幸村の策略によってならされていくのだと思うとニヤニヤしてしまいます。

鬼島様、相互ありがとうございました!
大事にします!

これからもよろしくおねがいいたします!



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