『旦那はやさしいから』決って最後にそう、はにかむ忍びに返される照れたような笑みは、計算されたものだと果たして彼は知っているのか、否か。

*そう言うの全部、おやすみなさい

「どうなのだ、佐助」
試しに、彼いわく“やさしい旦那”と称される真田幸村は声に出して、かの忍びに問うてみたが返ってきたのは規則的な寝息だった。
連日の激務がたたったのか、齢15にしてこの幸村が忍び隊の長を努めている猿飛佐助は忍びらしからず気配を消すのを忘れて、屋敷内で一番陽のあたる縁台のうえで丸くなって眠りこけているのである。小さな華奢な体を猫のように――胎児のように丸めて。
普段、口走る言葉は実年令よりしっかりとしたことを言い、大人たちの舌をまかせているというのに、その大人びた様子とはまた違った幼い様子に、男特有の征服欲がふつふつと沸き立ってくる。
 「こんな俺を知らんだろう、佐助」
自嘲気味に笑うがやはり、問えど返答はない。
しばし、幸村は寝息と風が揺らした葉の音と獅子おどしが鳴る、静謐でどこか神聖な空気に酔っていると、それを打ち破るがごとく、奥から女中のバタバタと騒がしい足音が聞こえてきて、自然と気分を害した。
「ゆ、幸村様!」
ひょっこり、肌掛けを持って現われた女中は、まさか誰かがいるとは思わなかったのだろう、急に足を止め、眠る佐助の頭を慈しむように撫でていた・・・しかし、どこか不機嫌な幸村に少々面食らった顔を向けた。
しかし、幸村はそんな女中に一瞥もくれてやる事無く、撫で続ける手は止めず、そっけなく、どうした?とだけ問うた。
佐助との時間を邪魔されたと思っている幸村の声にはやはり、刺がある。
だが、その原因が自分にあるとは知らない女中はその雰囲気に気圧されながらもやっとの思いで腕のなかの肌掛けを佐助に持ってきたのだと返した。幸村はそれから、是とも否とも言わず、ただ何の予告もなく黙って佐助をかるがるっと抱き上げた。
「ゆ、幸村様、どうなさるのでございますか?」
突然のことに女中はさっぱり理解が追い付かない。ただ、おたおたとしている。
その間にも、よほど佐助は疲れているのか目覚める様子もなく、眠りこけている。浅い呼吸のなかに、幸村の匂いが交じっていることに安心しきっているのか、すべてを預け、目を覚ます気配は微塵も感じられない。
そんな佐助の確かにかかる微かな重みに愛しさを募らせながら、少し抱き変えて、問答をする時間すらももったいないと言うように幸村は大げさにため息を吐いた。
びくり、と女中の肩がはねる。
「某の部屋で寝かせる。世話は無用」
幸村は、手短に言い捨ててさっさと女中を残していってしまう。その後ろ姿に顔を青くした女中は三つ指を突き、頭を下げた。

嗚呼。本当はこの忍びは忍びの癖して、主の“芝居”も見抜けてはおらぬのだろうな、と幸村は内心ほくそ笑んだ。
佐助が、お世話になってるのだから女中にはやさしくしろ、礼を尽くせと言った。
佐助が、素直で可愛いとすきだと言ったから触れさせたくなくて、犬や、猫、鳥の死骸を隠すように目につけないように、埋めるようになった。
佐助が、やさしいねと笑うから「やさしいひと」を演じるようになった。
佐助が、旦那の笑った顔が好きだというから人前でも、笑うようになった。
 佐助が・・・
 佐助が・・・

  全ては佐助のタメに、全ては佐助の前だけで実行される、彼が言う「やさしい旦那」は三文の猿芝居。
「それを見抜けぬとは忍び失格だな」
小さくつぶやいて、喉の奥で低くあざける。

本当は、沸き上がる欲のまま、まだ真の汚れを知らぬ身体を自分の物にして、いっそうのこと自分以外が映らぬように壊してやりたい。
(女中ごときにいちいち嫉妬していては身がもたんでな・・・)
だけど、そんな俺を知ったら、見てしまえば、佐助はどうなるだろう?
俺のもとから離れていく?俺を捨てる?俺を軽蔑する?
そうなるくらいなら、まだ「やさしい旦那」を続けているほうがまだマシだ。もう少し。まだ少し、デロデロに甘やかして、自分ナシじゃあ何もできなくなるまで。

「佐助、それまで眠っていろ」

ずっと、
ずっと、
俺の腕のなかで。
次目覚めたとき、 
その時は、すでに俺の腹の中だ。
逃れられることなど、できはしない――

 部屋につき、敷いた布団に佐助をゆっくりと横たわらせると、その赤く熟れた唇に、幸村は口付けを落とした。




ありがとうな気持ち


はあはあ。

ツボかツボがあああ!

すごく萌えポイントが刺激されるー!

大好きで大好きでたまらないあこがれのサイトさまです!

もう書かれる幸佐がすべて好きなのです!

年下佐助をリクエストしたらこんな素晴らしいお話をくださりました。げふん。
大好きです!
ありがとうございました!
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