痛いものは痛い
軍人ネタで、もし佐助が女の子だったら、な感じで。
なんか知らないけど佐助総受けになった。幸村以外過保護すぎる。
月に一度、上司は不機嫌になる。
そして、大抵周りのものたちはそんなときの上司にやさしい。
だいたいそうでなくても、佐助の周囲にいるものたちは佐助に優しいと思う。
"壊れ物でもあつかうように"佐助を大事にする。
その筆頭は幸村が苦手としている前田慶次で、佐助が何かを運んでいると(大体は押し付けられた書類の束だ)必ずと言っていいほど手を差し伸べている。大体、佐助はそれを軽やかにかわし、自分ひとりで運んでしまうが。その代わり書類の束のほとんどは幸村に押し付けられるのだから、断る意味がよく分からない。
(これは猿飛少佐の嫌がらせの一部なのだろうか……)
と、幸村は思いはしても、付き合いが長くなったせいか対して気にも止めなくなった。棒のように細いうでに分厚い紙の束を持たせるのは見ていて心苦しいし。
あと、何かあったら佐助のことはたのむから、と慶次に言われているのは
佐助には秘密だ。
幸村は知っている。
自分が軍の一部から気にいられていないように、若くして出世する佐助をよく思ってないものたちがいることを。
そういうものたちを、慶次が抑えつけていることを。
そして優しくするのは二番目に元親だろう。仕事を押し付けたり、佐助をからかったりしているが、荒事は俺の専門と言い張って、佐助を決して危険な軍務に付かせない。
先日も、元親が別件でしばらく軍を離れていたときのことだ。その別件というのが、なかなか解決するには時間のかかるものであったらしく、帰ってくるまでしばらく時間がかかるといわれていた。
いつもであれば、元親に優先的に回される『内乱の鎮圧』という仕事が佐助にまわってきた。佐助はそれを特に嫌がる風でもなく、淡々と任務を受けた。
人を統率する能力がないというわけではないが、誰から見ても人を傷付けたり戦ったりすることが不向きに見える佐助が、血なまぐさい『内乱の鎮圧』に向かうことに、佐助を知るものは誰もが不安に思っていた。
幸村は、というと、周りほど不安は抱いていなかった。何かあったら絶対に佐助を助けるという意思があり、佐助への信頼があった。
佐助は確かに華奢な印象があるが、そんなに皆が思っているほど弱くない。
無事やり遂げるだろうと幸村は思っていた。しかし、周りのものたちはそうじゃなかった。
誰かが報告したのか。それとも偶然なのか。……おそらく前者だと幸村は考えている。
元親は長期にわたるはずだった仕事を短期で解決させ、「書類とにらめっこしてるなんて俺にむかねえからな」と笑い、佐助が本来遂行するはずだった任務を横から奪いとるようにして、『内乱の鎮圧』に向かってしまった。
佐助はそれについて何もいわなかったが、幸村は知っている。
佐助が拳を握り締め、やり場のない感情の矛先に体を震わせていたことを。
風魔小太郎も、伊達政宗も、なんだかんだいいつつ、佐助に優しい。
守らなければならないか弱い女性や子供にでも接するように、佐助に接するのだ。
幸村は、上司が理由無きやさしさをあたえられているのを見るたびに、苛立ちを覚えるようになった。
佐助は、皆がおもうほど、弱くない。
母鳥が雛を庇護するように、真綿でくるむように。
そんな優しさを、佐助に与える必要なんて、ないのだ。
「痛い。腹が痛い。畜生」
佐助はうめきながら報告書を書いている。幸村と佐助しかいない部屋に、それはよく響く。
幸村は自分の分の仕事を片付けるために、資料に目を通していた。
年号と照らしあわせながら、書類をまとめる。
「薬を飲んだのだからじきに痛みはひきます。我慢してください」
「わかってるよ」
苛々しながら佐助は筆をすすめる。それでも幸村から見えないだけで少しだけ表情が和らいだ気がして、幸村も、佐助に見えないように少しだけ笑みを浮かべた。
こうやって、弱音とも取れる愚痴をこぼすのは幸村にだけだ。
ほかのものに言えば、心配されて帰れといわれるから。
やさしくされると、逆にそのやさしさを受け入れられなくなる。
甘やかされると、逆に甘えられなくなる。
けれど、ただ淡々と、受け流されるだけだと。
なぜだか甘えた言葉も、弱音も言っていい気がして、佐助はぶつぶつと不平や不満を口にする。
穏やかに帰ってくる幸村の言葉に安堵して、さきほどまでの不機嫌さもいつしか消えた。
了
女だからという理由でやさしくされる。
そんな状況がいやな佐助。
2007.06.30
四既