「使えない」
一瞬で地に伏した佐助に断じた才蔵の評価。佐助は冷静にそうだよなあ、と深々と頷いた。
ここまで徹底的に、むしろあっさりと倒されると、屈辱すら湧かない。
心配しただけ無駄だったな。才蔵は内心、佐助の今後をきにかけた己を笑った。
そんな心配、いらぬほどの爽快な弱さだった。
「まだ時期焦燥かあ」
手加減されていたので、気付いたら地面に伏していた、というだけで体の何処も痛くない。
佐助は立ち上がり砂埃を払った。
はあとため息をつき落ち込む佐助に才蔵は淡々と告げる。
「忍見習いといったところだな。忍として働けるようになりたければせめて三流忍くらいの実力を取り戻せ」
「駆け出しとか新米とか言えよせめて」
佐助はげんなりと肩を落とした。
「どちらにしろ使えないのは同じだ」
才蔵はくるりと掌を返し、持っていただけでつかわなかった武器をしまう。
軽やかに流れる風に、佐助と才蔵のゆったりとした装束がはためく。
その涼しさに佐助は目を閉じ、気分を切り替えるためにひとつのびをした。
「お仕事に戻りますかね」
残念そうだったが、力を失ったばかりのときのように辛そうな顔は見せない。
それを不思議そうに眺めている才蔵に、佐助は微苦笑してみせる。
「流石にふっきれるよ。それに、力はちゃんと戻るってわかったわけだからね」
そんなに落ち込まないよ。
才蔵は流石には見えないところで、微笑を浮かべた。
「完全に力が戻ったとしても、そのなまった体では以前のように動くとは思わんがな」
微笑はすぐに消える。
「せっかく前向きになっているのに水をささないでよ」
むっと顔をしかめる。
才蔵は唇を歪めた。
なんで俺がそんなことを気にしてやらなければならないんだ。と言いたげな嫌な笑い方だった。
「あのねえ」
佐助が息を巻き、性格の悪い副官に詰め寄ろうとしたとき、主の声が響き、佐助はそちらに注意を払う。
「佐助ー!」
山ひとつ向かいまで聞こえるような轟音に佐助はびくっと身をすくめる。
半月ほど前まではやれやれと肩をすくめて軽くいなしていた忍の姿はない。
顔を真っ赤にして、隠れる場所を探している。
(……あー)
才蔵は佐助を探して大声を張り上げる幸村と、顔を真っ赤にしてきょろきょろとしている佐助を見て、気付いてしまった。
分かりやすすぎるとうめいて、そっと額を押さえた。
続