俺だけを見つめていればいい。俺だけを感じていればいい。俺だけを覚えていればいい。


◇◇◇◇◇




幸村が体の関係を求めてきた。

佐助は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにふわりと笑んだ。

自分が望む所でもあったのだ。

(俺は誰かに求められて、ようやく呼吸が出来る)

(求められたいから、求め続ける。でも、返されるものがないと涙を流せないほどに辛いんだ)

(嗚呼、けれど自分は返されただけのものを返すことが出来ない)

(心に対して、返す心がない)

(だから偽りでいいんだ……)

(本当の言葉はいらないんだ)

"本当の言葉"はあまりにも重すぎる。

(そして偽りの想いにさえ返せるものを俺は持たない)

だから佐助は体を晶に差し出していた。

自分が温もりを得るためでもあったが、彼に快楽だけでも与えたいという償いの気持ちだった。

佐助は幸村の体に腕をからめ、「愛してるよ……」と熱っぽく呟いた。

幸村はそれに甘く優しく答えた。

「ああ、俺もお前を愛してる……」

佐助を抱き締め、耳元で囁いた。


*****

幸村の行う愛撫は、愛撫とは言えず、寧ろ、肉食獣が獲物を喰らう行為に似ていた。

「旦那……!おねが……ぃもっと優しく……」

佐助が涙混じりに懇願すると、幸村が笑んだ。

ぞくりと背筋に寒気が這うような、雄の顔で。

「晶のようにか?」

「……!」

佐助は思わず肌けた着物を体にたぐりよせ、腰をついたまま、ずるずると後ろに逃げた。

その小さな抵抗を笑うように、幸村は佐助を再度布団の上に引っぱる。

うつ伏せに押し倒し、細い体を覆い囁く。

「晶はお前をどういう風に抱いたんだ?」

優しく抱いたのだろうな。あれは忍であることがおかしいほど、優しい男だから。

「晶は優しかったか?」

優しく口付けして、優しく囁いて、優しく愛撫を施し、優しくお前に男をつきたてたか?

「俺は晶とは違う」

そう、佐助に告げ、大腿に手を伸ばした。

まだ堅いそこに指を挿し入れた。

快楽を得ることのできなかった体は、あれほど男に触れられた後だというのに、濡れていなかった。



それに幸村は不愉快そうに顔をしかめ、

「お前はまだ晶の体のままなのだな」

指で中を探る。

「ふっ、うっ……」


佐助は幸村の指に合わせて、声を噛み殺す。

「お前はもう、俺のものなのに、他の男の指でないと感じない体のままでいる気か?」

許されると思っているのか?

俺はこんなにお前を思っているのに、お前は違う男を求めている。

そんなこと……


この俺が許すと思っているのか?