穏やかに眠る貴方の唇からその名がこぼれおちたとき俺はもどかしさの理由を知った。
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佐助を抱き締めて眠ることも大分慣れた。
何もしない俺をからかうように、笑う佐助にも慣れた。
俺に無理をさせていることを知っているから、最後の一線を越えようとしない佐助の優しさにほっとしている。
佐助は俺に無茶を言うが、絶対に出来ないことは、頼まない。
本当に甘えられているわけではない。
佐助は甘えているふりをしているだけ。
愛しているふりをしているだけ。
佐助の無理を自分が聞いているはずなのに、自分が佐助に無理をさせているような……
そんな矛盾がたまに胸をかすめる。
(一緒にいてほしいなら、素直にそう言えばいいのに……)
佐助は幸村を求めるとき、必ず咎を責める。
その時の佐助の目が、幸村は嫌いだ。
罪悪感を感じ、今にも泣きそうな……
愛を囁くときの佐助の目が嫌いだ。
許しを乞うような、すがる瞳……
なあ、佐助。恋人を奪った俺がお前に罪悪感を感じるのが普通じゃないか?
なあ、佐助。恋人を奪った俺が許しを乞うのが普通じゃないのか?
なあ。
佐助……
俺は……
さみしがりやのお前を放っておくような酷い男ではないぞ?
償えなんて、理由を作らなくても、一緒に居てやる。
だから、その"目"をやめてくれ。
(晶と一緒にいたときは、そんな目をしなかった。幸せそうだった)
こころから笑むその顔は、とても美しかった。
(俺は……あの笑顔が見たい……)
溶けてなくなったはずの嫉妬が。
忘れていたはずの嫉妬が……
蘇ってくる。
(なあ、佐助……)
どれだけ、愛の言葉を囁けば。
どれだけ、抱き締めれば。
あの笑顔を俺に向けてくれる?
どうすればお前の不安を取り除ける?
どうすればお前の寂しさを埋められる?
なあ、俺はどうすればいいんだ?
「佐助……」
眠る女に囁くと、その口元が穏やかに笑んだ。
(あ……)
それに喜びを覚える幸村だが、佐助の唇からこぼれおちた言葉に、幸村は心臓をわしづかみにされるような痛みを覚えた。
「晶……」
幸せそうに……
安心したように……
夢の中で、その男に名でも呼ばれたか?
お前に、その笑顔をさせるのは、その男だけなのか?
(今、お前を抱き締めているのは誰だ?)
(今、お前の名を呼んだのは誰だ?)
これから、ずっとお前の側にいてやるのは誰だ?
(俺しかいないだろ?佐助)
俺だけを見てくれ……
俺だけを見ろ……
「佐助……愛している……」
他の男になどやりたくない。
例え死んだ男にでも……
かつての恋人にでも……
偽りの愛を貴方に告げたくないのは、
偽りではない愛を貴方に抱いているから。