匂いがする。
鼻を芳しいものが霞めるは上品さとは遠い。
しかし胸の内に火をつける艶めかしいものは質のよい酒のよう。
覗く肌はうっすらと赤らみ色香を放つ。
なよやかなようで芯の強さをうかがい見せる目は美しく輝き屈服させたい欲を煽る。
しかしそれを優しく撫でてやれば花びらが舞うように艶やかにそしてやわらかに目が潤み溶ける。その差が男の欲を満たし、満足の笑みを浮かべさせた。
「さすけ」
やわらかく己の名を呼ぶ男に佐助は微笑みを返す。
「け、じっ」
結合の痛みを耐え、慶次を安堵させるために向けた笑みは、汚れのない雪。
佐助の細い体を包みこむように抱き抱え、慶次は交わりを深くし、更に奥を打つ。
最奥をつかれた快楽に佐助は泣き、妖しく腰をうごめかさせた。
「もっと激しくして欲しい?」
少し声をひそませ、佐助を煽るように問う。熱を追うのに夢中な佐助は、後で後悔することも忘れうんと頷いた。
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「……あっもう……!」
佐助は頭を抱えてうめいた。闇に隠れて見えないのが幸いで、佐助は己の顔が紅を塗ったように赤くなっていることをわかっていた。
「どうしたんだ?佐助?」
嫌味も心配する様子もない、ただきょとんと疑問符を浮かべて慶次は首を傾げる。
「……あんたいくつ?」
「二十」
「なのになんでそんなに慣れてんの!?
俺一応忍よ!?こういうのにいかないように散々訓練されてんのに、なんであっさりいかされちゃうの!?
今、俺さまの矜恃ズタボロなんだけど!
『え?何このぼろ雑巾ばっちいから捨てちゃえ〜』って女中に言われそうなくらいぼろぼろなんだけど!!」
佐助の神経質な叫びを慶次は笑い飛ばした。
「閨を素直に楽しめないような矜恃捨てちまえって!」
「捨てられるか!
あーくそっ腰いてえ……」
佐助はぐったりとうなだれる。
「揉んでやろうか?」
慶次の親切な申し出もいらないっとけんもほろろに断り、佐助はぶつぶつと愚痴を溢す。
『あー俺、あそこでなんであんなこと……だいたいあそこで』
悔いがいろいろと残るらしく、佐助のひとりごとはやまない。
佐助は慶次を睨みつけた。
「次は冷静に抱かれてみせるから、もっかい」
佐助の台詞に慶次は吹き出す。
「もっとかわいらしくおねだり出来ないもんかねえ」
「おっ……!?
一体なにをどうすればそうとれるんだ!」
佐助は拳を握り怒鳴る。子供の剣幕のように必死で、そして滑稽だ。
慶次はくつくつと忍もしない笑い声をこぼす。
「気持ちよさそうにしてたもんな。もっかいして欲しいんだろ?」
違う違うと佐助は叫ぶ。そんな姿では恥ずかしいのを隠そうとしているようにしか思えない。
慶次はそれに聞く耳をもたず、佐助に覆い被さる。
「惚れたやつに頼まれたら、断れるわけないもんな。
満足するまでつきあうよ。佐助」
子供っぽく笑う慶次の目は、佐助への愛しさで暖かい光をともしていた。
了