首筋に唇を落とされ、俺はひくりと息を詰める。

「……佐助」

甘い声で呼ばれて、俺はんんと身をよじった。

「待って……だんな……おれがっきもちよくなってもっいみない、からっ」

「お前が気持ち良くなってくれたら、俺は嬉しい」

「ふぅ……あっ」

舌で辿られた場所が火傷でもしたように熱い。旦那の熱にもてあそばれて、俺はあえぐ。

「……ひゃっれもっ、らんながっ」

着物を脱がされる。

密着した皮膚からじわりと汗が滲む。

行為の熱さを体が冷まそうとしているのだろうが、そんなの焼け石に水。

俺はぽつぽつと汗を滲ませ、頭を振った。

「佐助……いいんだ。俺のために鳴いてくれ」

胸の飾りに到達した旦那の舌が、ちろちろとそれをなぶる。

俺が旦那にしたときは何もなかったのに、俺はそれに過剰に反応してしまう。

「……ぅんっあっ!」

平らな胸を吸い、片方の手でもうひとつの実をいじり、旦那は視線を上にあげて俺を見つめてくる。

「やっ見ないでっ!」

俺は今どんな顔をしている?女や俺が今まで抱いた男たちのように悩ましく歪んでいるのだろうか?

旦那は飾りをいじっていた手を、するすると下に落としていく。

腹をたどり、臍の脇を通り腰に到達し、内股で存在を主張する俺自身に触れた。

旦那は今まで口内でいじっていたものから離れ、顔をあげて問う。

「……ここ、いじって欲しい?」

俺はぶんぶんと首を振った。

「だんながっきもちよくならないとっ俺ばっかり……!」

「気にするな。俺は佐助が気持ち良ければそれでいいんだから」

でも。と口から滑りでる。

「だんなは……」

「佐助の声を聞くだけで愉しいから」

旦那はもう一度俺に口付けた。唇を少し離して、俺の唇に指を置く。

間近すぎて焦点の合わない目いっぱいに、旦那が居る。

「俺のために、鳴いてくれ」

そんなに熱がこもった目で見ないでくれ……

情けなくなる……

そこで見下ろして、ここで見上げるのは俺だったはずなのに。

ねえ、旦那。

本当に、俺だけ気持ちよくなっちゃっていいのかよ……

****

「……で?」

「散々いじられて、俺だけイかされマシタ。
悪いか畜生ーーーーーー!」

佐助は才蔵の部屋にある卓をちゃぶ台変わりにひっくり返そうとしたら、がん!と才蔵が卓を抑えつけ不発に終わった。

包み隠さず、秘め事を才蔵に語り終えた佐助は、才蔵に頼みこむ。

「薬の力を借りるとか、すっげえ嫌いだけど。
助けてくださあい!!」

主の不能を同僚に暴露するなど許されざることだが、それをしなければならぬほど佐助は切羽つまっていた。

「お前のマジ土下座なんて初めて見るな」

ほう、と感心し、秀麗な美貌に嫌味ったらしい笑みを刻む。

「天下一の薬師の才蔵さまあっ。超強力な媚薬とか精力増強剤とかちゃちゃっと作ってくれ!」

なりふり構わない佐助に才蔵はは肩をすくめる。

「お前に褒められても気持ち悪いだけだからな」

作ってやるという才蔵の言葉に佐助は男泣きをした。

「恩にきる!」

忍隊長の体面をかなぐり捨てた佐助の姿に、才蔵はくつくつと笑った。

「じゃあ、薬を作るから、材料をよこせ」

「わかった。何が欲しいんだ?」

佐助は息を荒くして尋ねる。

才蔵はさらりと答えた。

「お前の精液」

佐助がその一瞬、固まったのは言うまでもない。

「え?」

目をまるくし、口元を引きつらせた。

「一番強力な薬が欲しいんだろう?
俺が知っている一番強い薬は呪(まじな)いまじりのものだからな。丑の刻参りの藁人形。女が好いた男に出す料理に髪の毛を入れるのとおなじだ」

「いや、だからって、下のを?髪の毛じゃだめなの?」

薬の中に入れて、幸村に飲ませるものに、そんなものを入れると思うだけで、恥ずかしいし、汚らわしいと思うのだ。

「髪の毛では効力が弱いんだよ」

才蔵はふん、と鼻で笑った。

「今更何を恥ずかしがってるんだ。散々男や女に飲ませていたくせに」

「いや……うん。そりゃあね……」

俺は言葉を濁して才蔵から顔をそらした。

「幸村さまにしてほしけりゃ腹をくくれ」

「……いや、して欲しいんじゃなくて!俺が旦那を気持ちよくしてあげたいんだよ!」

慌て訂正を求めるが、才蔵は嘲笑う。

「話を聞く限りお前が"女役"だろうが」

ええ、と。昨日の話の流れでは確かにそう取れてしまうかもしれないけれど、断じて違う。

俺が上で、まだまだそういうことに関して知識がない旦那を優しく導いてやるのは年上の俺であって、旦那ではない。

「た、確かに昨日は散々鳴かされたかもしれないけどさ……」

恐れ多くも主である旦那に入れてやる気なのだ。

「……上の立場は譲れないよ……」

ふうん、と才蔵は気のない返事をする。

「……ま、いい。自慰でもなんでもして絞りとってこい」

「絞りと……露骨な言い方だなあ」

俺は肩を落とした。

「どんくらい必要なんだよ」

「約五回分」

「ごかっ……才蔵お前っやる前に枯らす気かあ!?」

俺は吠えるが、才蔵がしっしっと犬でも追い払うように手を振る。

「どうせ今夜も飽きずにするんだろ?夜に間に合うように薬を作ってやるから、さっさとすることをしてこい」

佐助は半分泣きながら、畜生っ鬼っでもよろしく頼む!とよく分からない捨て台詞を残し、去り際だけ忍らしく素早く姿を消した。