スランプスランプ
犬幸村×猫佐助
猫耳としっぽが生えてるやつらと、犬耳としっぽがはえてるやつらがあたりまえのように生きてる世界。
猫人が犬人を奴隷として扱ってる世界。
犬人の扱いは、主によってぴんからきりまで。
そういう世界観が嫌いなひとはブラウザバック希望です。
自分で書いててなんだかなあ……
1 出会い
雨に濡れた町を暗く包む曇の切目から、少しだけ光が見えた。
灰色のどこか寂しげな街並みを弱く照らし、それは消えた。市街の端に悠々とそびえ立つ見張り台から照らす光が変わりのように家々を明るく包みこむ。
訪れる夜の気配さえ、その光で消えてしまいそうであった。
「やれやれ。今日の仕事は散々だったな」
雨にうたれながら足早に歩く佐助の声音は、悲しげな雨の気配を裏切るように軽快で、ぼやいている割には明るかった。
薄い緑地の上着が、水を吸って濃い緑色になっていた。濡れた橙色の髪が額に張り付くのを鬱陶しそうにして、佐助は髪をかきあげた。
水溜りに足を勢いよくいれてしまい、おろしたてのズボンの裾が盛大に水と泥を弾いた。靴の中にまで浸入してきた水気に佐助はしまったと舌打ちをする。
きつい印象を与える厳しい顔立ちが、更に不愉快げに歪む。琥珀色の瞳に怒りがおびて、小さな唇がへの字を描いた。水を含んでびっしょりと濡れたしっぽが重い。生き物の倣いでか、重さで動き難くとも不快でしっぽが揺れる。
三角耳の中に水が入らないようにぺたりと耳を伏せた。
近くの建物の屋根の下で雨宿りをしていた同族の子供が吹き出すのを背中で聞いて、佐助の中で更に苛立ちが募った。
「天気予報なんてあてにならない。二度と信用しないからな!」
佐助は八つ当たりのように叫び、家を目指す。職場から安いボロ借家まではそれなりに距離があって、晴れの日は丁度よい散歩コースとなるのだが、雨の日を歩くには面倒な道筋となる。傘を持っていれば濡れると不平を漏らしながらも歩けるのだが、今日は天気予報を信じて傘を忘れてしまった。
「政宗も元就も酷えよ!傘のひとつやふたつを貸してくれてもいいじゃないかっ」
二人は帰る方向が一緒なんだから、同じ傘に入ればいいだろ。と訴えた佐助に、野郎と相傘なんて出来るかと断られた。
「バイト仲間が雨に濡れて風邪ひいてもいいのかよ」
哀れっぽく訴えてみせても、それを聞くものがいなければ所詮ただのひとり言である。佐助は口の中に広がる雨水の微妙な味を感じ、ようやく口を閉じた。それに、彼等は自分が風邪をひいて倒れたところで気にも止めないだろう。
傘を買うにも、学校にも通えない赤貧の自分には、百円の傘さえ買うのに抵抗がある。
それに新たに傘を買って家に使わない傘がたまるのも嫌だった。
「……ん?」
道の脇に建っている廃屋の物陰で何かがもぞもぞと動くのを佐助の目は捉えた。
近々取り壊しが決定しているこの建物は何時壊れてもおかしくないと思わせる外観をしていて、誰も近寄らない。
そんなところに誰かいるわけないだろうと佐助は判断し、通りすぎようとした。
しかし、後ろ髪を引かれるように気になり、佐助は何があるのか確かめようと建物に近付いた。
子供ひとり入れそうな段ボール箱が置かれていた。水で端がふやけている。段ボールは小刻に震えていて、その中になにかが入っているのは明白であった。
佐助は好奇心に負け、段ボールに蓋わするようにかかっていた毛布を取り払う。
そして、次の瞬間自分の浅はかさを呪った。
段ボール箱の中には、膝を抱えて震えている子供がいた。
茶色の毛並は手入れを怠っているせいかボサボサになっていた。猫人のしゅるりと優美なしっぽと比べ、くるりとまるまった愛敬あるしっぽは、彼が犬人の証である。
大きく見開かれた瞳が印象的だ。目をつむっても、まざまざと思い返すことができる、意思の強さを表す目。
「だ、誰だ!?」
子供は大きな瞳をうるませて佐助を気丈に睨みつけてくる。子供らしいあどけない顔立ちと涙で潤んだ目で睨まれても、そもそも怖くもない。それに、子供が睨みつけるのは子供が抱えている恐怖の裏返しだ。
恐ろしさを振り払うように挑みかかるように睨みつてくる姿はは"可哀想"と同情混じりで表現する以上にふさわしい言葉はないだろう。
「お前、捨てられたのか?」
育てるのに困った親に捨てられたのかもしれない。
そう珍しいことではなく、この子供だけではなく犬人の子供の捨て子など世の中にあふれている。
佐助は子供に手をのばした。噛みつかれるかもしれないと思ったが、子供はびくりと脅えただけで、頭を撫でてくる手にされるがままだった。
子供ながらに、猫人と犬人の上下関係は身に染みているのだろう。
子供は佐助の問いには答えず、佐助をじっと見つめてくる。
恐怖を押し隠した瞳が驚きに染まったのを見て、佐助は苦笑した。
犬人は猫人の奴隷と言っていい。犬人は猫人に飼われ、一生を終わる。主無き犬人はろくに職につけぬまま死に、もし働けたとしてもろくに給金をもらえずただ同然で使われて死ぬ。
猫人に飼われている犬人も、主によってはろくなものも食べれずに死ぬ。
この子供のように捨てられた犬人は、間をおかず餓死や病で死んでしまう。
猫人はある程度生活は保証されるものの、犬人はほとんどの場合見捨てられる。
子供にやさしい大人がいても、それが犬人の子供だと、塵でも見るような目付きで彼らを扱う場面を佐助はよく目にしていた。
この犬人の子供は、このままここに放置すればそう長くもたないだろう。
その事実が、佐助の中で苦い思いを生む。
犬人をゴミのように扱うものたちのように、佐助は犬人に対して残酷になれない。
佐助の中に葛藤はなく、俺さまの馬鹿、と何度も心の中で響いている。
もう、答えは決まっていた。
たったひとり生きていくだけで生活は苦しい。
そこに何も出来そうにない子供が増えたら、一層生活は大変になる。
けれど佐助は、関わってしまった小さい命を見捨てることが出来なかった。
「……おいで」
佐助は犬人の子供と目をあわせるために屈む。頭を優しくなでながら、やわらかに微笑んだ。
「俺が、今日からお前のご主人さまになってやるよ」
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台詞がどことなく怪しいけど佐助に他意はない。
これが幸村が佐助を拾うパターンなら、他意がありまくりなんでしょうが。
ああ!!
テスト勉強しないと!
四既