あまいきがする。



戦はしばらくなく、のんびりとした平和な屋敷の縁側で、佐助は幸村と一緒に茶を飲んでいた。

どこどこの茶屋の団子がうまいとか、どこぞの武家の少年が将来有望だとか。なんのとりとめもないことを会話し、穏やかに笑いあう。

「羽田殿の子息はなかなかの腕前だが、少し落ち付きがたらなかったな」
「昔のどっかの誰かさんみたいだね」
「はは、佐助は口が悪いな」

いつもの佐助の軽口に幸村は苦笑をこぼす。

そして、珍しく(むしろ初めて)堅物の主の口から、色恋の話題があがった。

一体なんの気紛れか、主さまが目を輝かせて問うてきた

「佐助の好きな人を教えてくれ」

餌を目の前にぶら下げられた犬のように期待の満ちた目で佐助を見つめる幸村。
佐助から秘密を教えてもらうことを微塵も疑っていないにこやかな表情に。

佐助は同じくにこやかな表情を浮かべた。

「じゃあ、旦那の好きなひとを教えてくれたらね」

「そうだな。まずはお屋形さまだ。それに佐助も才蔵も六郎も望月も由利も……」

延々と続く十勇士や真田家家臣の名前に、佐助は、はあと息を吐いた。

なんだ。女の子の話じゃあないのかよ。

浮いた話ひとつない主様に佐助は呆れ、じゃあ俺はね、と軽く返す。

「旦那も大将も才蔵も由利も、みんなが好きだ」

幸村はそれに、にいと笑みを浮かべる。

「そうか、佐助は某が好きか」

「え?ああ、うん」

「某も佐助が好きだ」

「…なあ、旦那。もしかして」

「某たちは両思いだな」

「いや、俺はそういう意味で言ったんじゃなくて……」

佐助の否定も聞こえぬふり。幸村はしたり顔で笑った。

「今日から俺たちは恋人同士だ」

強引なものいいに、佐助はちょっと、と反論しようとするが、団子を口にいれられむぐう、とうなるだけに終わった。


本気のような、佐助をからかうための冗談のような


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