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「無いな」

答えた声に女はまあと声を上げる。

逸らした顔は赤く、一体何故と女が尋ねると、暫く後に照れくさいと、簡潔でちいさな返事が聞こえた。

「とても意外ね」

「俺は、何かを言うのが、下手なのだ。」

抱きたいと、自分から言い出したこともない。いつもあちらから求めてくる。

「それは相手が鈍いんじゃなくて、貴方が悪いんだわ。どんなに愛しさをこめたって、求められたことがないんじゃ、同情としか取れないわ」

可哀想ね。貴方じゃなくて、その相手のひと。女はようやく、もらった酒を飲む。幸村はそれを視線だけで見つめ、やはり……、と、

「俺からいったほうがいいのだろうか。抱きたいと。愛していると」

そうでしょうねえ。女はうなずく。

「じゃないと、貴方の気持ちにそのひとは一生気付かないわよ」

女の言葉に、幸村は静かに衝撃を受ける。そして、何度もそうだな……とうなづいた。

「俺の本当の気持ちを、やつに伝えようとおもう」

決意した表情は、酒の勢いに任せたような胡乱なものではなく、確りとした理性と誠実さを感じさせた。

高値の花と歌われる自分たちを、狂わし焦がす男。

その男を夢中にさせる花とは一体どんな花なのか。

女は興味と、そして一抹の悔しさを隠し、幸村に向き直る。

「そのひとは一体どんなひとなの?」

幸村はすこし考えて、かわいい。とぽつりと言った。

かわいい、かわいいか……

遊女のように色の手管になれ妖艶な美貌を持つ女ではなく、そういう女のほうが好きなのか。と、内心ひとりごちた。

純情で無垢な女なのだろうか?けれど自分から積極的に求めてくるのだから、なかなかしたたかな女性なのだろうか?

会ってみたい……

女は自分が惚れた男が惚れた女に会いたいと思った。








女じゃあないんだよなあ……


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