3
「無いな」
答えた声に女はまあと声を上げる。
逸らした顔は赤く、一体何故と女が尋ねると、暫く後に照れくさいと、簡潔でちいさな返事が聞こえた。
「とても意外ね」
「俺は、何かを言うのが、下手なのだ。」
抱きたいと、自分から言い出したこともない。いつもあちらから求めてくる。
「それは相手が鈍いんじゃなくて、貴方が悪いんだわ。どんなに愛しさをこめたって、求められたことがないんじゃ、同情としか取れないわ」
可哀想ね。貴方じゃなくて、その相手のひと。女はようやく、もらった酒を飲む。幸村はそれを視線だけで見つめ、やはり……、と、
「俺からいったほうがいいのだろうか。抱きたいと。愛していると」
そうでしょうねえ。女はうなずく。
「じゃないと、貴方の気持ちにそのひとは一生気付かないわよ」
女の言葉に、幸村は静かに衝撃を受ける。そして、何度もそうだな……とうなづいた。
「俺の本当の気持ちを、やつに伝えようとおもう」
決意した表情は、酒の勢いに任せたような胡乱なものではなく、確りとした理性と誠実さを感じさせた。
高値の花と歌われる自分たちを、狂わし焦がす男。
その男を夢中にさせる花とは一体どんな花なのか。
女は興味と、そして一抹の悔しさを隠し、幸村に向き直る。
「そのひとは一体どんなひとなの?」
幸村はすこし考えて、かわいい。とぽつりと言った。
かわいい、かわいいか……
遊女のように色の手管になれ妖艶な美貌を持つ女ではなく、そういう女のほうが好きなのか。と、内心ひとりごちた。
純情で無垢な女なのだろうか?けれど自分から積極的に求めてくるのだから、なかなかしたたかな女性なのだろうか?
会ってみたい……
女は自分が惚れた男が惚れた女に会いたいと思った。
女じゃあないんだよなあ……
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