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敏い女だな、と幸村は思った。

幸村は、女に酒を勧めた。

窓辺に寄り添っていた女は、そこから動く風もなく、億劫そうに腕をのばしてきた。

「確かに、焦がれているものはおるな」

「ふふ。貴方のほうが?」

幸村はそうだとうなずいた。想い人のことを考えているのか目が、優しい。

「同じように……いや、それ以上の想いと愛しさをこめて抱いてやっているつもりなのだがな」

一向にこちらの想うように運ばない。とつぶやく声に、女はもらった酒を杯のなかでぐるりと回して笑う。

「嫌われているの?それともとても鈍いの?」

後者だろう。幸村は自嘲気味に答えた。

「俺が奴を抱くのを、同情かなにかと勘違いしている。奴を同情して抱いているのではなく、愛しいから、その身にすべてをそそいでやっているというのに」

どうしてわからぬのだろうなあ。あれは……

幸村の顔は片思いの切ない恋心に途方にくれている遊女たちのそれとよく似ていた。

酒が入っているせいか、遊女何かを尋ねる前に口をひらく。

「己はからっぽなのだと、よく俺に言う……空であることが怖く、いつもそれを埋めるのに必死なのだと。俺が抱くと満たされると言って、泣いてまで俺にすがってくる。救ってくれと。怖いのだと。口説き文句でしかないのに、いまだにそれに気付かぬのだからなあ、あいつは」

困ったやつだ。ひとりごちて、酒を飲む。空になった盃に、手酌で酒をそそぐ。

「頼まれて、抱いているうちに、こちらのほうが溺れてしまった。今では奴を抱かねば、こちらの身がもたぬのに。仕事と言って、すぐに姿をけしてしまうやつを、求めぬ夜はないというのに」

「それで、私たち遊女(おんな)を愛しいひとと重ねて抱いてらっしゃるの?」

「そうだ。やつと思いこまねば、正直抱く気が起きぬ」

女はそれに、くすくすと声をあげて笑った。正直な方。だから好きになってしまうのかしら。

「愛していると、いったことはあるの?」

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