軍人サナサス


佐助のなかにあるのは上司への敬愛であり、そこから逸脱する感情は微塵もなかった。
慕わしいと感じるのはその人柄にであり、そこに肉体に既存する欲求の発露など欠片もない。少なくとも佐助はそう思っており、幸村もそうであると疑いもしなかった。
戦場の女がいない男だけの空間は、禁欲を強いられる。
その。日常から逸脱した状況のなかで、男同士ですることで性欲の発散を求めるものがいることくらい、佐助は知っていたが、まさか自分がその対象として見られているなど、考えが及ぶわけがない。

「気をつけろよ」

はいはい、と佐助は銃の手入れをしながら頷いた。武器の手入れは戦場で生き残るために必ず念入りに行わなければならない。
それは分かるが、自分の話を真面目に聞こうとしない佐助に対して温厚な幸村もさすがに眉をしかめていた。

幸村はここ最近、何度も佐助に注意を促すようになった。

厳しい表情で佐助を見つめ、彼が手入れをしている銃を奪う。
少し前は真面目な好青年という風情であったが、戦況が激しくなってきてから、その表情はやわらかな面差しをなくし、凛々しいものに変貌している。厳しいものが混ざり、昔のような優しさが面差しから消えたせいか、なかなか威厳がある。


「俺の話をちゃんと聞け」

「聞いてますよ」

だから返してくださいよと佐助はため息交じりに告げる。困ったように笑い、何処か余裕の帯びた目で幸村を見あげる。

「お前は危機感がなさすぎる」

「そうは言うけどねえ。好き好んでこんな骨と皮だけの野郎を抱こうなんて考えませんって」



四既