やみよ
「呆気無いな……」
思っていたよりも、己が忍の体は脆かったようだ。壊れ物を扱うようにとまでは言わないが、乱暴にはしていないはずだ。
女を抱くように。
小姓を抱くように。
その細い体を組み敷いて。
女も男も知らぬ体に、初めて他人の生肌の熱さを教えた。
忍というのは修行の一環として「酒と女」をたつ流派があるらしい。その反対に「酒と女」の味を極限まで知り尽くし、色の仕事をそつなくこなす流派もあるようだが、幸村にとって都合がいいことに、佐助は前者の流派の者であった。
押し倒す前は強がってみせたが、組み伏せられ、圧倒的な腕力の差に気付くと、佐助は蒼白になりやめてくれと訴えた。
哀れになるほど、びくびくと体を震わして、目に涙まで溜めて、やめてくれと懇願する。
ここまで行為におびえるものと相対したのは幸村にとっては初めての経験で、つい面白くて乱暴に服を剥ぎ取った。
女のような悲鳴があがる。いつもは飄々としている忍のその様子があまりにも愉快で、もっと取り乱させて、後でからかう種にでもしてやろうと胸の飾りに吸い付いた。
甘い声が上がった。
目の前の忍が出したものとは思えぬ上ずった声。
主であろうがどこか他人を軽く見る風情のある忍が、たかがこれしきで犬のように人の顔色を伺うとは。幸村は一層愉快になり、佐助の肌を蹂躙する。
快感に素直な体は蒼白の肌を朱にいやらしく化粧し、艶声を熟れた実のような唇からもらす。赤い舌が、ずくずくと体を疼かせるので、幸村は佐助の濡れた唇に吸い付いた。
当初の目的など忘れて、幸村は佐助の片足をあげて閉じた足根から現れた蕾に手持ちにあった酒で塗らした指を入れる。
あとはあがる声に残った理性も波に浚われ、十分に解した後に佐助とつながり、幸村が達する前に佐助は何回も果て、ようやく幸村が一度佐助の中で達しただけで、佐助は気絶した。
「つまらぬ……」
幸村は佐助の髪を梳き、年齢よりも若干幼く見える寝顔を眺める。
はあ。何かをあきらめたようなため息が漏れた。
無邪気な寝顔を見ていると、それに鞭打つような行為をする気がうせる。幸村は佐助の目じりにうっすらと残る涙をふき取り、佐助の体を清め衣服を整えた。
佐助に薄い布団をかけ、あくびを殺す。
佐助の子供のような寝顔にもう一度目をやり、笑みをこぼすと、静かに立ち上がり部屋から出て行った。
夜はまだ、これからである。
百戦錬磨じゃない佐助も好き。
愛がない幸佐。
黒いけど、あんまり無理強いしない優しさはあるけれど、逆にそれが酷くもある。
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